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<全文掲載>行政改革推進本部提言:持続可能な水産業の実現と科学的根拠に基づいた資源管理体制の構築について

漁業法改正が実際に実装される2020年に向けて取り組むべき漁業改革について、事務局長を務める、党の行政改革推進本部で提言をまとめ、菅官房長官へ提出しました。漁業法改正は改革のスタートであり、やるべきことはまだまだ多くあります。科学的根拠に基づいた資源管理政策へ転換し、漁業者にとって納得感と予見性のある改革、これから漁業は良くなると確信できる改革を実現します。応援よろしくお願いします。

<以下提言本文>

持続可能な水産業の実現と科学的根拠に基づいた資源管理体制の構築について

平成31年4月24日
自由民主党 行政改革推進本部
規制改革検討チーム

戦後、日本は「沿岸から沖合へ、沖合から遠洋へ」をスローガンに、外延的に漁場を拡大し、世界一の漁業大国へと成長した。1970年代から沿岸国が200カイリ水域を設定すると、海外漁場からの撤退が相次ぎ、漁業・養殖業生産量は、1984年の1,282万トンをピークに、2017年の430万トンへと減少した。水産資源は減少し、1963年には62万人だった漁業就業者は2017年には15万人まで減少、うち65歳以上が38%を占めるに至るなど高齢者の割合も高く、漁村の限界集落化が進んでいる。

世界に目を向けると多くの先進国で漁業が成長産業となっており、そのための重要なファクターが漁獲規制であるというのが世界の共通認識である。漁獲規制の取組に関して、我が国は出遅れている。国が漁獲枠を設定しているのはたったの8魚種にすぎない。また、他国のように客観的な資源回復水準も設定されておらず、最近の漁獲実績を大幅に上回る過剰な漁獲枠が慢性的に設定されている。

新たな資源管理システムの構築により、わが国の漁業・水産業の成長産業化を目的として、昨年12月に70年ぶりに漁業法が改正された。行政改革推進本部における規制改革検討チームでは、改正漁業法の理念を迅速かつ着実に実現するため、漁業改革(水産資源管理)の議論、検討を重ね、水産庁、国立研究開発法人水産研究・教育機構、米国および日本の学識有識者などからのヒアリングを踏まえて、以下の漁業改革(水産資源管理)に関する提言を取りまとめた。


1. 資源管理体制の独立性、中立性、透明性の確保


我が国では、楽観的な資源評価によって、水産資源の減少が可視化されず、長年にわたり、水産業の衰退が放置されてきた。過去の水産基本計画では、漁獲量の回復を目標としてきたにもかかわらず、漁獲量は減少の一途を辿っている。漁獲の減少要因が曖昧にされたまま、水産政策審議会等で事後検証と改善が十分に実施されず、PDCAサイクルの確保ができていない。

また、1997年から国内の主要7魚種についてTACが設定されているが、これらの魚種の合計漁獲量は、1997年の246万トンから、2016年の133万トンへと半減している。現在まで、最近の漁獲実績を大幅に上回る過剰な漁獲枠が設定されおり、漁獲規制として機能していないのは自明であるにもかかわらず、十分な評価・改善がなされてこなかった。

こうした状況を踏まえて改正漁業法においては過剰な漁獲枠設定を防ぐべく、資源管理の前提をなす資源評価を最新の科学的知見に基づき行う旨を定めている(改正漁業法9条3項)。実効性のある資源管理には、干渉を受けずに科学的知見に基づいた資源評価を行うことが必要であり、そのためには担当する機関に高い独立性が必要であるところ、我が国では資源評価の独立性を確保できる制度が準備されていない。

我が国の関係法令をみるに、資源評価を担当している水産研究・教育機構が資源評価においてどのような権限を独立して行使できるかは明記されておらず、業務運営は国立研究開発法人として主務大臣の監督・関与を受ける。また予算についても資源評価は水産庁からの委託事業として拠出されており水産庁の影響を強く受ける体制になっている。

そうした問題を解決するために、米国やEUなどの海外では、利害相反者を徹底排除した第三者によるピア・レビューを導入するなど、資源評価のプロセスに対して、独立性・中立性・透明性を制度的に確保している。我が国でも水産分野のEBPMを促進するために、以下の制度改正を提言する。

  • 水産資源管理の行政庁から独立した公的な科学調査・評価機関(「海洋水産資源管理センター(仮称)」)(内閣府・農林水産省共管、環境省協議)を新たに水産研究・教育機構から分離・独立させて創設すべきである。
  • 資源評価を担当する機関の権限を、法令において明記すべきである。
  • 独立性確保のため、利害相反者を徹底排除した科学者による資源評価検討段階でのピア・レビュー制度を創設し、漁獲枠設定にあたり上記レビューに基づく資源評価を基礎とすることを定めるべきである。またピア・レビューは公開すべきである。
  • 上記ピア・レビューが科学的に適正に行われるための前提として、即時に資源評価の基データや用いられた計算式などについては、科学的検証が可能になるよう公表すべきである。
  • MSY(最大持続生産量)を達成するためのTACを決定する漁獲管理ルール(HCR)を第三者委員会の承認のもとで定める。
  • 資源評価に加え漁獲枠設定も含めた資源管理全体に対する運営に関し、独立性・中立性・透明性を担保すべく、水産庁、業界団体、水産研究・教育機構から独立した外部評価機関を創設する。
  • 資源評価のための予算を委託事業としてではなく、交付金として拠出し、必要額を確保する。国立研究開発法人水産研究・教育機構法の改定を行い、国民のため、資源の持続性のための研究機関へと改組する。水産研究・教育機構が収集したデータの国民への情報開示を進め、幅広い目的での学術利用を促進する。
  • 水産研究・教育機構の理事長公募については、科学研究開発機関の法人長に適する大学学部長相当の学位、学識、管理能力を応募資格要件とする。
  • 水産研究・教育機構への水産庁等の行政庁からの幹部職員出向を禁止する。


2.資源管理制度の民主的な運用


改正漁業法によって、新たな資源管理制度の大きな枠組みが示されたものの、細かい設計は未だに示されていない。従来型の、行政が一方的に制度や漁獲枠配分を決定した後に、漁業者に説明をして理解を求めるというプロセスでは、漁業者の理解と協力を得るのは難しい。クロマグロの場合も合意形成に失敗し、漁獲枠超過や漁業者による行政訴訟へと発展している。

新たな資源管理システムの科学的な信頼性、実効性を高めるため、科学的データを基礎とした上でTAC/IQ管理の制度設計を広く国民に開かれたオープンな場で議論・検討し、漁業者の意向を尊重しながら、細かい制度設計や漁獲枠配分をすすめるべきである。

世界の様々な規範(国連海洋法条約、SDGsなど)では、小規模伝統漁業が資源にアクセスする権利を優先することがうたわれている。特に減少している資源に対しては、小規模漁業者に優先的に漁獲枠を配分するなどの配慮が必要である。

  • 科学的データを議論の基礎とした上で、漁業者が参加できる議論の場をつくり、透明性のある漁獲枠配分や漁獲枠譲渡ルールを実現する。
  • 国際的な規範に基づき、小規模伝統漁業の権利を優先する漁獲枠の配分ルールを策定する。
  • 海洋と同じく水産資源は国民共有の財産であるとの理念・認識を深める。


3.資源回復の着実な実行


農林水産省や水産研究・教育機構の調査からも明らかなように、日本の水産資源は総じて低水準にあり、資源回復が急務である。漁業者の自主的な取組である資源管理計画については、ほとんど情報公開されてこなかった上に非科学的な指標を用いており、科学的な検証を行えない内容であることが党の行政改革推進本部で行った事業レビューのヒアリングを通して明らかになっている。また平成30年度の農林水産省の事業レビューでも「資源管理が適切に行われているか確認することのできるアウトカム指標」の必要性など同趣旨の指摘を受けているところであり、科学的根拠に基づく実効的な資源管理措置およびその公表を進めるべきである。

  • 資源回復を必要とするTAC対象魚種・系統群の科学的回復シミュレーションとKPIを速やかに公表する。
  • 資源回復の期間における減船・休漁支援の具体的な制度設計(基金方式の実施体制、沿岸・沖合漁業の漁獲量配分、適正な漁船数等の漁獲努力量、漁業者収入の直接補償など)を速やかに公表する。
  • IUU(違法・無報告・無規制)漁業の撲滅のため輸入・輸出水産物の漁獲証明を含めた水産物トレーサビリティ制度の法整備を行う。
  • 法制化が議論されている収入安定対策事業については、資源管理推進の趣旨に照らし漁獲報告義務の履行および科学的資源管理の実行を要件とすべきである。また、資源管理に取り組む小規模事業者が加入できるための対策を講じるべきである。
  • MSY水準で漁業を行う場合に適切な漁獲努力量の推定を行い公表する。



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