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日本成長戦略における17の戦略分野に関する5つの基本原則

令和7年1119

自由民主党

日本成長戦略本部

  

 「責任ある積極財政」という考え方の下、これまでにない大胆かつ柔軟な発想で、思い切った政策を打ち出すことによって、足元の経済状況に的確に対応しつつ、我が国経済の成長を実現していくことが必要である。

 我が本部としては、「強い経済」の実現を目指す高市内閣の経済財政運営を最大限に後押しすることとし、政府の成長戦略の検討・策定に当たり、下記のとおり、提言を行う。

 

 

 高市内閣は、成長戦略の最も重要な柱として、AI・半導体、造船、量子など、17の戦略分野における「官民連携による危機管理投資・成長投資の促進」を掲げている。戦略分野における官民連携の投資促進については、期近に迫る経済対策及び令和7年度補正予算だけでなく、令和8年度以降の予算・税制改正も視野に入れ、以下の5つの基本原則に沿って、必要となる政策を検討・実行していくことが必要である。

 

1.成長の契機となる複数年度の視点・取組

 企業が行う投資判断に先立っては、政府がその予見可能性を高めることが必要である。

 このため、①供給サイドからは、投資支援に対する複数年度にわたる予算・税制措置へのコミットメント、②需要サイドからは、投資やイノベーションを促進する需要の創出・拡大に向けて、官公庁や事業会社による調達・購入への官民のコミットメント、規制改革・規格の導入など、それぞれ継続的・制度的な支援の方針を明らかにすること。その際には、例えば、日本を牽引する人材の育成に資する科学研究費助成事業について、複数年度にわたる取組を推進することなどを通じ、拡充する。量子に関する研究開発や低軌道衛星コンステレーションの構築の支援などにおいて、複数年度の予算支援措置を講ずることとした上で、令和7年度補正予算や令和8年度当初予算において、必要額を前倒しで計上・執行すること。コンテンツについて、複数年の支援を含めた官民投資を推進し、成長投資を拡大することで海外展開を促進すること。また、財源措置についても、複数年度の枠組みで検討すること。

 各戦略分野において、こうした供給・需要両面からの支援を通じて実現すべき投資の内容、時期等を含めた「中長期のロードマップ」を策定し、官だけでなく民間を含め、今後の具体的な投資額にコミットすること。

 

2.成長を支える人材の結集(ヒト)

 戦略分野における官民連携の投資を担う人材を確保することが必要である。

 このため、政府として、持続的な賃上げを含む人的投資やリ・スキリングの支援、産業人材の育成に向けた施策を充実・強化するとともに、例えば、リ・スキリングにより育成する人材、大学などにおいて育成を強化する人材の分野や数など、こうした施策によって実現する具体的な目標を定め、これにコミットすること。大学・高等専門学校における理工・デジタル系人材育成の強化や文理分断からの脱却を図るため、成長分野転換基金の拡充・活用を行うこと。

 医療機関や介護施設等における経営の改善及び従業員の処遇改善につなげるため、報酬改定の効果を前倒しすることが必要との認識に立ち、令和7年度補正予算において、「医療・介護等支援パッケージ」を緊急措置すること。そして、その効果を減ずることがないよう、令和8年度の報酬改定の議論を適切に進めること。

 心身の健康維持と従業者の選択を前提として、労働時間法制に係る政策対応の在り方を多角的に検討するなど、働き方改革の総点検を含む労働市場改革を推進すること。

 

3.成長を支える資金の供給・確保(カネ)

 戦略分野における官民連携の投資に必要となる中長期の資金を安定的に確保することが必要である。

 このため、政府として、「資産運用立国」の取組を継続・発展させる形で、NISAの充実、確定拠出年金(DC)の改革等を通じた家計における貯蓄から成長投資への流れの加速、「地域金融力強化プラン」の策定・実行、金融機関による伴走支援を含む仲介機能の充実、成長資金を提供できる社債市場の活性化など、我が国のインベストメントチェーンを更に強化すること。

 

4.成長を牽引する企業の経営力の向上(マネジメント)

 戦略分野における官民連携の投資を直接担うのは企業である。全体として、収益が向上し株主還元が増加する中、企業には、現預金の増加ではなく、将来の成長に向けた人的投資や設備・研究開発投資の資金として積極的に活用することが求められる。

 このため、政府として、即時償却等の大胆な設備投資税制の導入、研究開発税制の充実など、他国と比較して遜色のない投資環境を整備するとともに、コーポレートガバナンス・コードの見直し、成長投資促進ガイダンスの策定、人的資本開示の充実など成長志向型のガバナンス改革、事業再編・再構築、M&A・企業結合の促進など、企業の経営力や規律を高める政策対応を強化すること。

 

5.成長を加速する国際連携(アライアンス)

 戦略分野における官民連携の投資は、国内だけをそのターゲットとしていては、大きな成果を挙げることは期待できない。

 このため、政府として、企業に対し、それぞれの投資を、関連する内外のサプライチェーンの強靭化やエコシステムの形成、そして、同盟国・同志国との連携の強化及び経済的な連結性の向上につなげるよう促すこと。特に、米国関税対応として重要性を増すグローバルサウス等の国外新市場開拓に取り組むため、令和7年度補正予算において、グローバルサウス諸国におけるビジネス展開を強力に支援すること。

 

(以 上)