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高市内閣の経済政策をサポートするための緊急提言

高市内閣の経済政策をサポートするための緊急提言

 

令和7年11月20日

資産運用立国議員連盟

 

 日本経済は、現在、2年連続で5%を上回る賃上げ、過去最高水準の設備投資、600兆円を超える名目GDPなど、歴史的な転換点にあり、こうした経済の動きを金融面から強力に支えてきたのが「資産運用立国」の取組である。

 

 岸田内閣以降の4年間、政府・与党は、家計の資金が投資に向かい、企業価値向上の恩恵が家計に還元されることで更なる投資や消費を創出し、日本経済の成長と国民所得の向上に貢献する「資産運用立国」の取組を推進してきた。

 これまで取り組んだNISAの抜本的拡充・恒久化、コーポレートガバナンス改革、資産運用業やアセットオーナーの機能向上といった幅広い施策は着実に進展し、 国内外の投資家や若い世代を含めた国民から高い評価を得ている。

 他方、「資産運用立国」は日本全体の資金の流れを大胆に変えていく改革であり、その実現には未だ道半ばである。

 

 こうした中、高市総理の所信表明演説や片山金融担当大臣の講演において、「資産運用立国」の取組を継続し、その実現に向け更に発展させること、そのための新たな金融戦略を策定する旨、高市内閣としての力強い決意が表明された。

 自由民主党の議員で構成される当議員連盟としても、高市内閣の方針を歓迎するとともに、高市内閣が目指す「強い経済」の実現に向け、「資産運用立国」の取組を通じて貢献していく所存である。

 

 こうした意識の下、政官民が一体となり取組を推進していくため、まず、年末に向け、高市内閣において取り組んでいただきたい事項として、以下を提言する。

 

 

1.全世代の国民が安定的な資産形成を行うための環境整備

 NISAは、家計の金融資産が預貯金に偏重している中、国民各々のライフプランに沿った安定的な資産形成を支援する最重要のツールであり、安倍内閣の下で2014年1月に開始された。その後、岸田内閣において、制度の抜本的拡充・恒久化を行い、2024年1月から新NISAが開始されたが、今やNISA口座数は約2,700万(本年6月末)となり、18歳以上の国民の4人に1人が口座を保有する状況に至っている。  累計買付額も、新制度開始前(2023年12月末:35兆円)から、本年6月末時点で、倍増近くの63兆円となり、政府目標の56兆円を2年以上前倒しで達成した。

 高市内閣において、こうした家計の安定的な資産形成の動きを更に加速していくため、以下に取り組むこと。

・ こども支援の一環として、多くの若者が夢と希望を抱き、一定の資産を持って進学や社会人生活をスタートできるよう、現行18歳以上とする「つみたて投資枠」の年齢制限を撤廃すること(こども支援NISA)。 

・ こども支援NISAは、NISA利用者から支持されてきたシンプルな制度設計、  高い利便性を損なうことなく、こどもが成人するまでの様々なライフイベントへの準備にもその資金を活用できるような柔軟な仕組とすること。

・ 高齢者等の世代が、計画的に資産運用を続けながらその成果を生活に充てる ことができるよう、債券中心の投資信託などNISA対象商品の拡充、商品の入替をしやすくするための制度対応、定期・自動的な取崩しサービスの普及などに取り組むこと。また、引き続き、高齢者のニーズに沿った商品(プラチナNISA)の導入についての議論も継続していくこと。

 

2.スタートアップ投資の促進に向けた環境整備

 世界に伍するスタートアップエコシステムの実現、スタートアップの規模拡大に向けて、資金供給強化や出口戦略の多様化等が重要である。このため、

・ オープンイノベーション促進税制[1]の適用期限を2年延長するとともに、M&A型の適用対象について吸収合併やマイノリティの発行済株式取得、上場スタート アップの株式取得に拡充すること。

・ 海外投資家から国内への投資の障壁となっているとの指摘がある外国組合員 特例税制(PE(恒久的施設)課税特例)[2]について、その利便性を高め、諸外国とのイコールフッティングを図るべく、要件や手続きを見直すこと。

 

3.資産運用立国を推進していくための体制の整備

 金融庁は、新たに設置された組織であるが故に他省庁と比較し局や課等の機構が少ないが、資産運用立国を含め、経済・金融環境の変化により増加する課題に対応するため、金融庁の抜本的な組織拡充が不可欠である。具体的には、資産運用・   保険監督局や銀行・証券監督局への組織再編、官房担当の局長級ポストの新設などを実現すること。

 


[1]  国内の事業会社又はコーポレート・ベンチャー・キャピタルが非上場スタートアップの株式を取得する際に取得価額の25%を課税所得から控除するもの。新規出資型(新規発行株式の取得を対象)とM&A型(発行済株式の過半数以上の取得を対象)がある。

[2]  日本にGP(無限責任組合員)がいるファンドに対して海外投資家がLP(有限責任組合員)として出資する場合、ファンドを通じて得た国内源泉所得は課税されるのが原則であるが、一定の要件を満たす者については非課税とする特例。