シェアリングに活路?人口減少時代の郵便局の役割を考える
総務省で2月14日、郵便局活性化委員会の初会合が開かれました。この委員会は、情報通信審議会の郵政政策部会のもとに設置したもので、少子高齢化や人口減少が進むこれからの社会において、郵便局の果たす役割はなにか、また利用者の目線に立って利便性をどう向上させていくかといった長期的な課題について、郵政や経済学を専門とする大学教授や地域活性NPOの代表、現職の市長など10人の有識者の方々が討議し、方向性を打ち出していくものです。
今回のブログでは、郵便局を取り巻く社会情勢や方向性について共有した上で、注目している郵便局の活性化アイデアについてご紹介したいと思います。
ピンチもチャンスもある、これからの郵便局
郵政民営化の当時からも議論されていましたが、全国の郵便局の利便性を向上させつつ、人口減少時代においても、全国にあまねくネットワークを維持し、ユニバーサルサービスをどう提供していくかという課題は、ますます難しくなっています。
郵便局の数は、民営化当時の24,540件から昨年末の24,404件と大きな減少にはなっていませんが、地域住民の高齢化や減少、後継者不足が本格化する前に対策を講じる必要があります。
その一方で、郵政が直面している時代の波は、そうしたピンチだけでなく、テクノロジーの進化や国際化の進展というチャンスもあります。訪日外国人は2012年からの5年で、830万人から2400万人に急増しています。多言語翻訳機能を備えたタブレット端末を各郵便局に配備するなど、2020年東京オリンピック・パラリンピックを見据えた外国人向けのサービスを充実させる取り組みも徐々に始まっています。
(総務省資料より)
郵便局のリソースをシェアして活かす
そして、いま注目しているのが、シェアリングエコノミーの潮流との掛け合わせです。内閣府「2030年展望と改革タスクフォース報告書」の資料によると、全国の空き家の件数は、2013年に820万戸だったのが、今年は1076万戸、2028年には倍増の1757万戸になると予測されています。
社会的に「遊休資産」が増える傾向にあるなかで、地域の郵便局が持っているヒト・ハコ・モノ・ネットワークを利活用し、テクノロジーで新しいニーズを掘り起こしながら、地域貢献やビジネスチャンスに繋げられるのではないでしょうか。
郵便局のもてる資産の代表は、コンビニのない過疎地でもしっかりと存在するアクセスの利便性と、公的なイメージによる信頼性の高さだと考えています。
その資産を生かせる取り組みとして、自治体窓口業務の委託が挙げられます。
すでに全国170市区町村の603局で、住民票の写し、戸籍の謄抄本、印鑑登録証明書などを交付するサービスが開始。そして、この連動で利便性を高めるのが、ブログでもたびたび書いてきたマイナンバーカードです(過去記事:マイナンバーで853の行政手続き書類を省略!電子政府へ着実に一歩)。マイナンバーカードを使って、各種証明証を発行するキオスク端末の配備が14の郵便局ではじまっています。より幅広い自治体業務を郵便局に委託することができれば、各地域の住民にとっても利便性が上がりますし、自治体の業務削減にもなります。
また、一部地域で開始されていた「みまもり訪問サービス」が昨年10月から全国展開されています。これは毎月1回、郵便局員がお年寄りの家を訪れて、生活状況を確認して家族や自治体に知らせるものですが、過疎地域でネットワークを持つ郵便局のリソースを活用し、東京などで離れて暮らす家族の安心にもつなげることができます。
その他にも、配達用のバイクや車両にカメラを付け、AIによる画像処理を組み合わせることで、道路の破損状況を自治体に代わって確認することもできるかもしれません。
なお、他の事業者の路線をシェアする取組もスタートしています。
利便性の高い郵便局と保育所は相性がよい
過疎地だけでなく、都市部でも新しい活用のチャンスはあるでしょう。保育施設との併用ができるのであれば、待機児童の解消の一助になりえます。さいたま市のさいたま中央郵便局では、民間事業者と提携し、3年前に局内に認可保育園を開設した事例があります。同郵便局は、武蔵浦和駅近くにあるので、埼京線で都内に通勤する親御さんには便利です。
もともと郵便局は利便性のよい場所にあるところも多く、厚労省も不足しがちな保育所用地の確保先として期待しています。
もちろん、保育所以外の利用アイデアもまだまだあるはず。民間企業の斬新なサービスを見ていると、驚くような活用法が出てくるのではないかと思います。郵便局のポテンシャルが引き出されることへの期待を持ちながら、まずは、行政の立場として、そうした民間の画期的なアイデアが実現しやすいような環境作りをしっかりと行っていきます。
なお、今回の会合については総務省のサイトにも掲出されていますので、ぜひご覧ください。
情報通信審議会 郵政政策部会(第20回)配付資料・議事概要・議事録
■お知らせ
私たち若手議員の取組みを描いた本が出版されました。一昨年の年末、高齢者への3万円の給付に私や小泉議員が異論を唱えたところからスタートし、 高木 新平 (Takagi Shimpei) 君に手伝ってもらった「レールからの解放」・「厚労省分割案」・「人生100年時代の社会保障へ」、そして「こども保険」構想へとつながっていった500日。同世代の民間有識者の同志と2020年以降の未来を見据えて議論したいという想いでサポートをお願いし、最後まで粘り強く伴走してくれたRCF 藤沢 烈 (Retz Fujisawa)さんの著書です。
普段テレビや新聞で報道されない、議員の政策立案過程のリアルな姿が見て取れる貴重な本だと思います。ぜひ読んで見てください。