自民党の成長戦略
7月3日から17日間の参議院議員選挙が始まりました。
2025年は日本で普通選挙が法定されて100年、女性への参政権が認められて80年、そして選挙権年齢が18歳に引き下げられてから10年目を迎える節目の年です。その歴史や重要性を再確認しながら、是非投票に足を運んでください。
自民党をはじめ、各党が公約を出しています。
報道を中心に、目の前の物価高対策に注目が集まっていますが、本質として参院選で争点にすべきは、これから日本が人口減少下でも経済成長し続けられる戦略を描けているか、厳しい安全保障環境で国民の命と暮らしを守る外交・安全保障政策か、そしてそれを支える憲法改正への考え方です。
このブログでは自民党が考える経済政策についてお伝えしていきたいと思います。なお、選挙公約というより私が事務局としてつくってきた自民党の成長戦略や各種政策が中心ですが、これがベースとなって公約の一部に取り込まれています。
今年の成長戦略は3つの観点でつくっています。

①日本経済がデフレからインフレに切り替わったところで、物価上昇に対して賃金がまだ追いついていない方々の生活支援
②物価上昇を越えて賃金が上がり続ける環境を作る
③人口減少が進む中でも経済成長できるように設備投資・イノベーションへの投資を進める
これに対して政府として賢く予算を使い分け、継続して経済が成長し、賃金が上がり続ける状況を作ることが重要だと考えています。
①の「物価上昇に対応した生活支援」ですが、これは既に去年の補正予算で決まったものが今まさに皆様に届き始めている状況です。
具体的には5月22日からガソリン・軽油へ10円/Lの補助が行われ、7月1日からは電気代・ガス代への補助が開始されました。所得税の103万円の壁の引き上げ(物価上昇に合わせて123万円まで引き上げ)についても年末調整で適用され、一人当たり2万円から4万円の減税となる見込みです。
「今の物価上昇に対して1人2万円の給付だけでは足りない」という声がありますが、これまでの対策に加えて、年内に追加で支援を届けるものです。
野党が提案している消費税減税は、毎年15兆円程度の財源が必要となり、全てを赤字国債で賄う提案です。また、所得税も178万円まで減税枠を引き上げる案もあり、これも4兆円から5兆円かかると考えると、合計で毎年20兆円を赤字国債で発行する案となっています。
そして消費減税が適応されるのは早くて2026年夏頃からとなるため、目の前の物価高対策への対応としては厳しいのではないでしょうか。
2024年・2025年と2年連続で中小企業4%以上、大企業5%以上の賃上げが実施されており、今年の賃上げが実際に反映されてくるのは秋ごろになります。今年、実質賃金がプラスになり好循環のモメンタムを作れるかどうかが勝負のタイミングだからこそ、年内に支援策を届けることも重要です。
※なお、報道ベースですがシンクタンクの試算では、世帯年収500万〜550万円の4人家族の場合の支援額は以下のようになるようです。私の方でも総務省の家計調査を元に試算すると近い数字になりました。
給付金(自民・公明) :12万円(2万円×大人2人+4万円×子ども2人)
消費税一律5%(国民・共産) :約12万円/年
食料品のみ消費税0%(維新・立民) :約6万円/年
インフレの中で税収は毎年平均で約3兆円増えてきており、税外収入もインフレで増えてきているのは確かです。この考え方についてはデフレ時代に決めた、税収見積もりのやり方や、財政フレームをインフレ時代に合わせて見直す必要があり、急ぎ進めています。個人的な試算では5兆円程度は通常予算でさらに追加できるのではと考えています。これをどう日本の成長と家計の豊かさに繋げていくかが重要です。
今回の経済政策では、②の賃上げが継続できる環境づくりということに約4兆円を投じる考えです。その中身として、一つ目は税制や各種制度のインフレ対応です。

所得税の103万円の壁を物価上昇に合わせて引き上げを行いましたが、他にも各種制度にデフレ時代のものが残っています。例えば、企業が従業員に食費補助をする際の非課税枠が月額3500円(1日約170円)に設定されており、これは40年前の物価で計算されたままで動いていません。小さなものに見えますが、この制度が企業の社食やお弁当を納入する事業者の利益を圧迫しています。こういった予算や税制など公的制度の一括見直しを進めていきます。

2つ目は、医療・介護・福祉で働く約900万人の給与の引き上げです。そのためには政府が公定価格を引き上げる必要があり、給料を毎年3%上げていくためには、約8000億円/年が必要となります。

3つ目は、行政が発注する仕事の金額を物価上昇と賃上げを反映した適切な金額にすることです。行政が発注する仕事は日本のGDPの1/4を占めており、1例として高知県ではGDPの42%を占めています。ここが伸びないと地方経済は伸びません。2020年から直近までの企業物価指数の上がり幅で計算すると、毎年プラス3兆円から4兆円の上乗せが必要です。

行政が発注する仕事は公共工事だけでなく、ビルのメンテナンス、ゴミ収集、印刷、お弁当の納品、文房具の納品など、地域の中小小規模事業者が多く請け負っています. これらの企業が賃上げできる利益を確保するためには、予算を確保するとともに、入札制度を見直し、最低価格制度などをチェックすることで、値下げ競争によって「安かろう悪かろう」にならないようにすることが重要です。これにより、地域の中小小規模事業者も賃上げが持続的にできる環境を作っていきます。
なお、民間同士の取引については公正取引委員会による取引適正化を進めることで、価格転嫁が進んできています。とはいえ、まだできていない事業者の方も多いので、今年の通常国会でいわゆる下請法を改正し、さらに取り組みを強化しています。
そして、もう一つ重要なのが、将来の人手不足に対応しつつ、稼ぐ力を強化するための設備投資支援です。現在のインフレは輸入物価の落ち着きだけで解決するものではありません。例えば、建設分野では人手不足が深刻で、4、5年前の2倍から2.5倍の建設見積もり価格が出ており、建物が建てられない状況が起きています。これはまさに供給力不足によるインフレです。
この人手不足・供給力不足に対して、設備投資(機械・ロボット・AI・ITの導入)を行うことが重要です。これにより、一定のインフレを抑える効果が期待でき、企業による投資が増えることで経済も成長します。
アナログ規制10000条項の一括見直しも2024年夏にほぼ完了し、建設現場の目視点検がドローンや遠隔カメラにかわったり、農地の実地監査が衛星画像で対応できるようになるなど、大幅に効率化が進むとともに、スタートアップの成長機会になっています。引き続きテクノロジーの社会実装を阻む規制改革を進めていきます。

サービス業では勤怠管理や経理のクラウドサービス、飲食業ではモバイルオーダーや電話予約対応のAI、ビルメンテナンス等では清掃ロボット、医療・介護分野では音声入力ソフトなど、それほど大きな金額でなくても30%以上の省力化ができている現場が多くあります。
今、まさにアメリカも必死で取り組んでいますが、製造業の国内回帰にも対応できるよう、大規模な設備投資減税を実現するとともに、地域の中小・小規模事業者の省人化投資を5年間で官民で60兆円の投資を目標に徹底的に支援していきます。あわせてM&Aによる成長もやりやすくなるよう、のれんの非償却化の会計基準見直しなども進めていきます。
特にロボットは人手不足の多くの分野で需要があり、すでに各所で活躍しはじめています。政府としても研究開発を後押しし、ロボット産業を立ち上げていくことで、世界と競争できる成長産業になるよう取り組んでいきます。
地方にもまだまだ伸び代があります。その代表は農林水産業です。2012年安倍政権から取り組んだ結果、農林水産物の輸出は当時5000億円→1兆5千億円まで成長しました。今後は世界にどんどん進出している日本の飲食店やコンビニ等、日本の食産業の展開を後押しすることで、2030年5兆円の輸出額を目指します。
合わせて全国に新しい企業城下町を作るプランを進めています。すでに瀬戸内、前橋、長崎など各地で企業が街づくりに資金を投じて、地域とともに長期的な成長を目指す取り組みが広がってきています。今後、市街化調整区域等の土地利用の見直しや、企業版ふるさと納税の制度見直し、地域教育機関と企業との連携がしやすい制度変更などに取り組み、地方への企業の投資を一気に促進していきます。
輸出で稼ぐ力も重要です。ドイツは日本の人口に比べて7割の人口ですが、輸出額は日本の2倍です。私自身、環境副大臣の公務やAZEC議員連盟の活動でASEANに何度か訪問しましたが、日本製品や技術に関するニーズは非常に高く、地方の中小企業やスタートアップが海外営業を強化すればもっと売れると確信しています。米国関税の交渉をしつつも、成長するASEANやグローバルサウスにもっと輸出を強化すべく、官民で連携して積極的に売り込んでいきます。
一方、コストを抑える政策も必要です。上下水道の運営改革は、最低でも都道府県単位、できれば全国10事業程度に広域化していけば、年間数千億円の運営コストを抑えることができ、それを現場の賃上げや設備更新に回すことができます。それ以外の分野では、消防や国民健康保険事業も広域化することで大きな効果が見込めます。

実際に奈良県では消防本部を県に集約したところ、現場職員を120名増やすことができています。それぐらい市町村ごとの消防本部のバックオフィスの仕事に人員が割かれているということです。
呉市の健康保険事業では、糖尿病予防に取り組んだところ20万人の人口で医療費を年間2億円抑制することができています。全国共通で取り組めば概算で年間1200億円の医療費抑制です。本来、介護予防など先進自治体で成果がでているものを全国共通で提供することで、大きく抑制効果を出すことができるでしょう。デジタル行財政改革で進めていますが、今後さらに加速していきます。保険料の抑制にも繋がります。
このように、限られた予算ではあるものの、伸びている税収を賢く活用し、将来にわたって日本経済が成長し、賃金が上がり続ける環境を作ることを目指しています。これが将来の就職、子育てや結婚といった様々なライフプランを考える際の安心につながり、少子化問題の解決にもつながると考えています。このような考えを自民党の経済政策として伝えていきたいと思います。
参院選では私も仲間たちの応援に全国を回り、各地でこれからの日本を成長させるプランなどをお話したいと考えています。SNSなどで告知し、演説の内容も共有していく予定ですので是非現地に足を運んでいただくか、YouTubeやSNSをご覧ください。
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今回の経済政策についてはこちらの動画でも説明しております。宜しければご覧ください。