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子育てを社会全体で支える時代へ、小池都政に期待する2兆円“貯金”の投資

幼児教育・保育の無償化や待機児童対策を進めるため、先の衆院選でお約束した「2兆円パッケージ」の具体化に向けた動きが本格化してきました。それに伴い、報道や当事者の発信も活発になっています。

今朝(9日)の日経新聞では、予算の内訳についても報じていました。(あくまで報道ベース)

幼児教育無償化200万人増 政府、2兆円枠組み固める

※日経記事より引用

 

また、駒崎弘樹さんが、認可外保育所を無償化の対象から外す動きへの批判をされていて反響を呼んでいます。

無償化「認可外保育所排除」でもたらされるのは、より激しい保活地獄

報道どおりの案だとすれば批判はもっともです。

私自身は認可外も含めて無償化を実現し、保育所の整備も同時に進める。そのために必要な財源確保に知恵をしぼるべきと考えています。

なお、ここで共有しておきたい大事なことは、幼児教育・保育無償化VS待機児童解消という対立構図で子育て政策に想いのある人同士が対立することは誰のプラスにもならないということ。両方達成できる財源確保に向けて一緒に運動していけたらと思っています。

その上で、冷静に考えるためにも知っておいていただきたいのは、今回話題となっている2兆円のパッケージにおける幼児教育・保育の無償化の実施は消費税増税後ですから早くて2020年4月からということ。合わせて、パッケージの中には32万人分の保育所整備も含まれているということです。

ですから、現状の待機児童が多くいる状況ですぐに来年から無償化がスタートするものではありません。ですから、このパッケージの取りまとめ時期である11月末までだけの議論ではなく、来年の政府の成長戦略(6月想定)に不足している政策を盛り込むことが重要です。

ぜひ引き続き子育て支援の意義と必要性の議論を盛り上げていただき、政治の背中を押してください。前向きな議論が私たちの大きな力になります。

 

潜在的待機児童を見据えた対策を

 

では11月以降に議論すべきことは何か。少子化はまさに国難であり静かなる有事です。危機的な状況だからこそ2兆円パッケージ以外にも、有効な切り札があればどんどん使っていかねばなりません。そこで私から2つ提案があります。

一つ目は、保育ニーズの「想定外」への対応を準備しておくことです。

現在の政府の子育て安心プランでは、2022年度末までに約32万人分の保育所整備を掲げ、安倍総理はこれを前倒しする考えを表明しています。(図は「政府の子育て安心プラン」より)

ここで気になるのは、この32万という想定は、「すぐに預けたいのに預けられなかった」というように顕在化したニーズを基準にプラスαしたものです。

ところが、民間の研究機関の調査・試算では、それに加えて「そもそも保育所利用を諦めていた」方々、いわゆる「潜在的待機児童」の存在を指摘するものもあります。あくまでひとつの参考ですが、野村総合研究所は今年5月、政府の女性就業率目標を達成するために、2020 年までに新たな整備が必要な保育の受け皿は「88.6 万人分」と推計した調査結果を発表しています(参照:野村総合研究所「政府の女性就業率目標を達成するためにはどの程度の保育の受け皿が必要か」)。

実際、保育所増設で待機児童が一時的にゼロになっても、またニーズが増えるという「いたちごっこ」の事例が出ています。潜在的待機児童の存在も想定して財源など、できる限りの手を打つ必要もあるのです。

東京が突出している“貯金”

その意味でも、二つ目に注目したいのが、保育所整備を特に必要しているのが、税収や地域経済が豊かな都市部であることです。自治体の“貯金”にあたる基金に目を向けると、東京都は、待機児童問題がもっとも深刻である一方で、「財政調整基金」「特定目的基金」「減債基金」を合わせた総額は約2兆5,700億円(2016年度)積み立てています。

実は、この額は、ほかの都市部の地域、たとえば大阪府(3,260億円)、愛知県(2,485億円)、神奈川県(1,947億円)などと比べても突出しています(最少額の山口県は269億円ですから東京と桁が2つ違います)。

もちろん、いまの制度が、東京都を含む都道府県が保育所整備にコミットしづらい構造になっていることも事実です。たとえば、私立保育所の整備費は国が50%、市区町村と事業主が25%ずつを負担しています(下記の図参照)。

 

つまりいまの制度では、都道府県は関わっていません。市区町村のほうが、地域の保育ニーズを詳しく把握して適切な投資判断ができるという制度設計になっているからです。

 

「日本のエンジン」東京こそ大胆な投資を

東京都は区部を中心に用地不足や地価高騰のあおりで保育所整備が遅れてきたことを踏まえ、昨年から保育所の整備で借地を活用する場合、借地料に対する補助を拡充したり、市区町村が都有地をさらに活用しやすくしたりなどの取り組みはしています。

参照:東京都「待機児童解消に向けた緊急対策」(2016年9月)

しかし、いまだに待機児童は解消されない現状を考えると、東京都の持てる豊かな財源を、いまここでこそ、さらに活用できないでしょうか。決して2兆円の基金全てを、ということではなく、東京の待機児童解消に必要な分だけ、東京都内の保育所整備にということですから、待機児童約8600人分=約400億円(仮定の試算)を一度だけ投資するという規模です。

 

「基金を貯めているのはバブル崩壊時の税収減の教訓を踏まえてのものだ!」という意見もあると思いますが、2兆円以上も必要でしょうか。さらに2020年のオリンピックを控えて東京が数年内に大不況を心配しすぎる必要はないのでは。

 

私としては、東京が日本のエンジンだからこそ、国と歩調を合わせて大胆な投資を決断していただきたいと思います。小池知事、都議会の皆さまの活発な議論に期待します。

 

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※2兆円の政策パッケージの中身をどう詰めるか、そして子育て世代の声を届けるために実は重要な来年上半期までに議論すべき点については、後日あらためて書きたいと思います。

※基金については各都道府県、市区町村が将来の公共施設建替などの将来予測と見えない将来不安から積み立てているもので、全額が投資に回せるものという考えではありません。