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経済成長・脱炭素・経済安全保障 3方よしのAZEC構想

今回、AZEC議員連盟でインドネシアとマレーシアを訪問しています。目的は相手国の首脳や閣僚と会談することで、日本が推進している「AZEC構想」が各国の経済成長・脱炭素・経済安全保障に貢献するものと、改めて強く認識してもらい、協力関係を広げるとともに、具体的なプロジェクトを前進させることにあります。

そもそもAZEC構想とは?

AZEC構想(アジア・ゼロエミッション共同体構想 – Asia Zero Emission Community)とは、岸田政権で2023年に正式に発足した協力の枠組みで、アジア11カ国(豪州、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、日本、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)がそれぞれの事情に合わせて、脱炭素化に向けた取り組みを加速させるための日本のイニシアティブです。

AZEC構想パートナー国

脱炭素の議論になると、火力発電はダメ!となりがちですが、それぞれの国の事情を考えず一律の理想論を押し付けるのではなく、現実的な脱炭素の道筋を各国が協力しながら進んでいくのが特徴で、多様なエネルギー源や技術を活用し、地域全体の排出量削減を目指す、柔軟で現実的な協力の枠組みになっています。

なぜ日本がAZEC構想を推進するのか?3つの意義

日本がAZEC構想を協力に推進している背景には、大きく分けて3つの意義があります。

1.アジア全体の脱炭素化への貢献:地球規模の課題解決に不可欠

地球温暖化は、国境を越えた喫緊の課題です。アジア地域は、世界のエネルギー消費量と温室効果ガス排出量の大きな割合を占めており、この地域の脱炭素化なくして、地球全体の目標達成はありえません。日本は、これまで培ってきた省エネ技術や再生可能エネルギー技術、そして火力発電の高効率化技術などを共有し、アジア全体の排出量削減に貢献することが求められています。AZEC構想は、そのための重要なプラットフォームです。

※そもそも脱炭素に意味があるのか、世界的には脱炭素は終わったのでは、という意見を時々いただきますが、自然災害の大規模化など実際に気候変動による被害が大きくなっている中で、各国の政府はもちろん民間企業も強い危機感を持って取り組んでいます。特にASEANは島嶼部も多く、強い危機感を持っています。米国でもトランプ政権で色々と動きはありますが、民間企業の中では本質的に行動は変わっていません。

あと、地球温暖化は太陽の活動や、地球の地軸の傾きによるものだという意見も目にしますが、この期間の温暖化については人間の経済活動が大きな要因となっていることが、科学的にも明らかになっています。

2.エネルギー安全保障の強化:持続可能なエネルギー供給体制の構築

エネルギー資源の多くを海外に依存している日本にとって、エネルギー安全保障は国家の根幹をなす課題です。AZEC構想を通じて、アジア各国との間で多様なエネルギー源の開発や安定供給体制を構築することは、日本のエネルギーリスクを低減することにつながります。例えば、水素やアンモニアといった新たなエネルギー源の共同開発、再生可能エネルギーの相互融通などは、将来の安定的なエネルギー供給に繋がります。

3.経済成長と環境保全の両立:ASEANの成長を日本の成長に

脱炭素化への取り組みは、経済成長の足かせになるという考え方もありますが、AZEC構想はむしろ新たな経済成長の機会になります。2050年カーボンニュートラル実現に向けてASEANでの必要投資額は4000兆円と想定されており、日本の持つ革新的な環境技術やノウハウを活かすチャンスになります。アメリカの関税政策によって輸出産業が打撃を受ける可能性がある今こそ、ASEANとのビジネスを拡大することは大きな意義があります。

AZEC構想の具体的な取り組み例

AZEC構想では、以下のような具体的な取り組みが進められています。

すでに350件を超えるプロジェクトが動いており、その中では、日本の大企業はもちろん、中小企業やスタートアップの技術やノウハウも生かされており、新しいビジネスチャンスになっています。

まとめ

AZEC構想は、日本だけの取り組みではありません。アジア各国との協力と連携を通じて、地球規模の課題解決に貢献しつつ、経済成長を実現していく重要な取り組みです。現状、アメリカの関税政策で世界経済が混乱している中、中国が影響力を高めようとする動きがあります。その中で、価値観を共有できる国々と経済的な連携を強めることは、お互いを守ることにも繋がります。ぜひこの機会にAZEC構想について知っていただき、新たなチャンスに繋げていただけたら嬉しいです。