世界へトビタテ!福山の大学生:地域の情熱が育てるグローカル人材
先日、福山市で、地元出身の大学生らを対象にした「ふくやまグローカル人材育成事業」がスタートしました。文部科学省が5年前から行っている留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」の「地方版」にあたる取り組みの一環で、福山市では、地元と国際社会を結ぶ役割を目指し、留学を希望する学生を3月まで募集しています。
変わりつつある流れ
日本人の海外留学生の数が10年前に大きく減少しました。当時のリーマンショックによる世界的な景気後退や少子化の影響に加え、マスコミでは「内向き志向」が指摘されてきました。
私自身は残念ながら長期の留学経験がないのですが、いまでも海外出張で刺激をもらうたびに、「10代、20代前半に1年でも留学すれば、一生の財産となる広い視野を身につけられるだろうな」と、強く感じます。裏を返せば、海外経験のある若者が減っていくことは、人が「最大の資源」である日本には危機的な意味があります。
そこで政府として留学しやすい環境づくりのためにスタートしたのが「トビタテ!留学ジャパン」でした。早いもので今年で5年目になりますが、文科省や日本学生支援機構の調査では、留学生の数が堅調に増えています。
「トビタテ!JAPAN」公式サイトより
今度は、地方と世界をつなぐグローカル人材を
そして近年は、この流れを地方の人づくりにもいかしていこうと、「トビタテ!留学JAPAN」に地域人材コースが設置され、各地で十数人程度の学生を対象に、海外留学と地域企業でのインターンシップを組み合わせたプログラムが実施されています。留学費用の一部は、各地の企業に出していただいた額に基づいて日本学生支援機構が支援します。
過去3年間で北海道から沖縄まで20の地域において実施されていますが、平成30年度(2018年度)は、山形県、群馬県太田市とともに福山市で行うことが決まりました。
福山の事業は「トビタテ学種!花開け学種!ふくやまグローカル人材育成事業」と名付けられ、 福山市出身の大学生(または応募時点において福山市内に立地する大学に在籍する学生)で、福山と国際社会をつなぐ役割に意欲があり、なおかつ卒業後は福山で働き、地域に貢献していただくことを要件に、3月30日まで募集しています。
ものづくり産業の発展に向けて学ぶ「ものづくりコース」、瀬戸内の山・海の資源等を生かした観光・商品開発などを学「地域づくりコース」、AIやロボットなどのイノベーションの知見を培って地域企業での活躍を目指す「ビジネスモデル革新コース」の3つがあります。留学が決まれば渡航費を含めた留学準備金(最大で20万円)や授業料(30万円)などの支援が受けられます(詳しくは福山市のサイトで)。
事業発表の記者会見の模様は、地元の各新聞でも大きく取り上げられ、県内外から注目を集めつつあります。
広島)福山の将来を担う人材育成の留学新制度:朝日新聞デジタル
「明るい未来を築く」情熱がトビタテ実現へ
実は、この「福山版トビタテ!」が実現した陰では、ふるさとの将来を想い、若い人が希望を持つ街にしたいという情熱をもった方々の奮闘がありました。
「トビタテ!」の地域人材コースは、各地で産官学で構成する協議会が運営し、留学生の選考や支援にあたりますが、福山では、一般社団法人「福山グローバルパートナーシップ協会」(FAGP)がその役割を担います。このFAGPの立ち上げに奔走したのが、地元・福山において地域密着で活動しているJC(福山青年会議所)の現役・OB有志の皆さんでした。
福山市は優秀な地域企業が多くあることもあって、人口は47万人規模を維持していますが、市の人口ビジョンでは、30万人台に減少する可能性も予測しています。少子高齢化に加え、IT化、グローバル化という時代のうねりに自分たちの街も直面していくなかにあって、有志の皆さんが「国際的な視野とネットワーク、先鋭的なアイデアを持った人材」を育て、福山の明るい未来をつくろうという意欲をみなぎらせて活動をスタート。
道のりは決して平坦ではありませんでした。市内の各企業を何十社とスポンサーのお願いにあがったものの、お断りされたところも少なくありませんでした。ただ、断わられた企業からも福山のための活動の意義は認められ、励ましの言葉をもらったことを糧に、着々と協力の輪を広げていきました。
そして1月までに約40社がFAGPの会員に名を連ねました。そして、今回「トビタテ!JAPAN」地域人材コースに正式に採択されたのです。
先日、メンバーからは「産官学の連携をもっと昇華させて、留学などの枠組みを超えて福山のために活用したい」と力強い抱負をいただきました。FAGPは、このトビタテの事業を足掛かりにして、福山大学や地域企業との「産官学」の連携を深めて、国際的な交流ネットワークの拠点として福山のまちづくり、人づくりを進める構想を展開しようとしています。
福山が多様な人材が溢れる活力ある地域になるよう、私もしっかりサポートしたいと思います。
■お知らせ
私たち若手議員の取組みを描いた本が出版されました。一昨年の年末、高齢者への3万円の給付に私や小泉議員が異論を唱えたところからスタートし、 高木 新平 (Takagi Shimpei) 君に手伝ってもらった「レールからの解放」・「厚労省分割案」・「人生100年時代の社会保障へ」、そして「こども保険」構想へとつながっていった500日。同世代の民間有識者の同志と2020年以降の未来を見据えて議論したいという想いでサポートをお願いし、最後まで粘り強く伴走してくれたRCF 藤沢 烈 (Retz Fujisawa)さんの著書です。
普段テレビや新聞で報道されない、議員の政策立案過程のリアルな姿が見て取れる貴重な本だと思います。ぜひ読んで見てください。