スポーツを生かした地域活性化のこれから
先週末、福山マラソンが開催され、今年も出場しました。2.5km〜ハーフまで7つのコースがあるなかで、私は11時スタートの3kmコースに参加。
実は、そのあと正午から福山駅前で別の式典出席が入っていたため、スケジュールの都合で目標タイムが強制的にセットされるという稀有な体験をしました(汗)。沿道からの温かい声援の後押しもあり、無事、時間内に完走できました。
37回目となる今回も、福山だけでなく、広島県内や隣の岡山県など各地から6444人のランナーが参加してにぎわいました。例年、この大会がはじまると、地元の方々が春の訪れを実感するだけでなく、市民が身近にスポーツを楽しむことができる、とても良い機会になっています。
県内外からたくさんの方々が訪れることで、飲食や宿泊などの経済効果もあるでしょう。ここ数年、国を挙げて取り組んできた地方創生においても、スポーツは「キラーコンテンツ」の一つとして期待されており、2年後の東京オリンピック・パラリンピックをひとつの節目として、さらに力を入れていきたいところです。
中心市街地の活性化の切り札としてのスポーツ
スポーツを生かした街の活性化においては、近年、「スマート・ベニュー」という概念が注目されつつあります(参考:文科省への提出資料)。これは日本政策投資銀行がスポーツの数年前から提唱し、スポーツ庁・経産省の資料でも紹介されているものですが、中心市街地の衰退で悩む街に中核となる交流空間として、商業施設や公共施設などの機能も併せ持つスポーツ施設をつくり、周辺部エリアの経営と一体化させます。
(出所:政投銀の文科省への提出資料より)
モデルケースとなる新潟県長岡市の「アオーレ長岡」は、市役所に、Bリーグの新潟アルビレックスBBが本拠地とするアリーナを併設しており、中心市街地の通行量を年々伸ばすことに成功しているそうです。
なお、マツダスタジアムも成功事例の代表として挙げられます。これは決して広島県民としての贔屓目ではなく、政投銀もスポーツ庁も実際に注目しています。
350億円の経済効果(試算・中国電力)もさることながら、「カープ女子」のブームにみられるように、広島と縁のない首都圏の方々が応援に駆けつけることで広島のブランドが全国区となることは、県民にとってかけがえのない誇りとなり、郷土愛を育むことにつながります。
ハコモノに頼れない地域はどう活性化する?
一方で、日本の自治体の大半は、プロスポーツチームが拠点とするような立派な施設がありません。これから人口が減少し、税収が楽観できない状況にあっては、ハコモノを作ってもその維持管理が難しいところです。どのようにしてスポーツを生かした活性化をするのか、創意工夫が求められます。
「コト消費」という観点では、福山マラソンのような集客力のあるイベントが伝統的にある地域は基盤が整っています。ただし、近年は各地でマラソン大会が続々と新設されるなど、この分野でも「都市間競争」になっていますので、「トップアスリートも参加するのか、市民ランナー重視か」といった特色づくりが大事になります。
また、ひとたび大会を開催すると、通行止めや警備といった運営上の問題や、宿泊施設、交通アクセスの問題、なにより地元の市民の理解や協力がなければ成功はありません(その点、福山は40年近い歴史があるので、アドバンテージはあります)。
経済効果という点では、表面的に「コト消費」としてのスポーツイベントを企画しても、それが実際の「モノ消費」につながらないと効果が半減します。参加した人たちに「また参加したい」と思っていただけるかどうか。
できれば、そこから「もう一泊して観光地をみてみよう」「せっかくの美味しい名物を食べてみよう」と、ご当地に目を向けていただけるような導線の設計も重要です。そうした横断的な施策を進めるには、行政だけでも、スポーツ団体だけでも難しい。場合によっては、地域外の専門家の知見も借りて、官民一体、市民も参加しての「新しいお祭り」として企画を緻密に練り上げていかなければなりません。
6月10日には『せとうち福山-鞆の浦トライアスロン』が予定されています。
https://tomonoura-triathlon.com
福山は、新幹線でアクセスでき、観光資源にも恵まれていますので、スポーツによる地方創生のポテンシャルはまだまだあると思っています。よい知恵があれば、提案いただけると嬉しいです。私自身もさらなる可能性を追求していきたいと思います。
■お知らせ
私たち若手議員の取組みを描いた本が出版されました。一昨年の年末、高齢者への3万円の給付に私や小泉議員が異論を唱えたところからスタートし、 高木 新平 (Takagi Shimpei) 君に手伝ってもらった「レールからの解放」・「厚労省分割案」・「人生100年時代の社会保障へ」、そして「こども保険」構想へとつながっていった500日。同世代の民間有識者の同志と2020年以降の未来を見据えて議論したいという想いでサポートをお願いし、最後まで粘り強く伴走してくれたRCF 藤沢 烈 (Retz Fujisawa)さんの著書です。
普段テレビや新聞で報道されない、議員の政策立案過程のリアルな姿が見て取れる貴重な本だと思います。ぜひ読んで見てください。