Blog ブログ

総合経済対策における重点事項

※提言全文はこちらからご確認ください

総合経済対策における重点事項

【経済産業部会】

 世界では産業政策の大競争時代に突入しており、欧米・中国をはじめとする諸外国は、国内への産業回帰に必死に取り組む動きが加速している。我が国経済は、足元では企業収益の悪化懸念と不確実性の拡大が進んでおり、投資と賃上げを継続できるか、今がまさにその瀬戸際にある。我が国経済を持続的に成長させ、国民の生活を豊かにするためには、需要と供給の両サイドからの経済政策を展開しなければならない。需要側としては、物価高を超える賃上げを促進し、家計の向上により消費の拡大を図る。同時に、供給側として、戦略的な成長投資を加速させ、企業の供給力・競争力を向上するとともに、貿易・サービス収支の改善等に導く。こうした需要と供給の動きが企業収益を向上させて、更なる賃上げと投資につなげていくことが重要である。また、これらの取組を支援することは、一度は財政にマイナスの影響を与えるものではあるが、その支援の効果が現れてくることで数年後には税収増をもたらす、いわば成長投資であり、決して単年度ベースでの財源にとらわれて大胆な取組が損なわれるようなことがあってはならない。

 上記を踏まえた上で、以下3項目を、早急に講じなければならない。

 

1.物価高への対応、賃上げ環境の整備

 生活の安全保障・物価高への対応として、当分の間税率(旧暫定税率)の廃止に向けて、廃止までの間も、補助金を活用することで燃料油の価格引き下げに対応する。廃止に際しては、燃料流通の現場への影響に配慮すべく、適切に支援する。また、厳冬期の電気・ガス代を支援する。

 また、コスト高から中小企業を守り、何よりもそこで働く方々の生活と所得を守らなければならない。そのためには、雇用や家計の大部分を支える中小企業の事業継続を支える環境を整備するとともに、経済を牽引する「強い中小企業」創出に向けて、経営力を向上させ、「稼ぐ力」の強化と賃上げの好循環を目指す。具体的には、官公需を含む取引適正化や制度的対応を含む事業承継・M&A等の事業環境整備を推進する。また、成長ステージに応じた形での金融支援に加えて、徹底的な伴走支援等を通じた生産性向上・省力化とともに、M&Aも含めた飛躍的成長に資する設備投資支援を抜本的に強化する

 

2.危機管理投資・成長投資による強い経済の実現

 2040年までに国内投資を年間200兆円規模へと倍増させることを目標とし、高付加価値化に資する設備投資を予算や税を含む施策を総動員して促進し、AI・半導体、サイバー、GX、ロボット、バイオ、マテリアル、防衛産業、経済安保等の戦略分野に大規模かつ長期の危機管理投資・成長投資を加速する。また、中堅企業や100億宣言など成長志向型企業の成長投資促進等による産業クラスターの戦略的形成を促進する。量子、宇宙、バイオ等の先端技術分野においても、民間企業によるコミットのもと、官民が連携しながら大胆な投資を促進する。その際、こうした戦略分野に取り組むスタートアップ企業については、研究開発に加え、事業化・商業化を見据えた支援を充実するとともに、産業用地の確保など、対日直投も含めた国内の投資環境の整備に努める。また、今後、海外市場の獲得拡大が見込まれる、戦略分野の一つであるコンテンツ産業については、日本発で国内外に流通するプラットフォーム群を後押しするとともに、世界で戦えるコンテンツを生み出すための支援や国内外のロケ誘致支援を複数年度で大規模に行う。

 

3.エネルギー・資源安全保障の強化

S+3Eの原則の下、危機管理投資、成長投資を促進し、エネルギーコストの低減、原子力や、地熱・ペロブスカイト太陽電池・洋上風力をはじめとする国産エネルギーの活用を進める。
原子力については、安全性の確保を大前提に、立地自治体等関係者の理解を得た原子炉の再稼働を進めるとともに、次世代革新炉やフュージョンエネルギーの開発を進める。資源開発については、南鳥島周辺海域でのレアアース生産に向けた研究開発等を加速化するとともに、JOGMECによるリスクマネーの供給等を通じて、上流権益確保・供給源多角化に取り組む。省エネについては、工場や家庭等における省エネ・非化石転換への支援、省エネ診断を推進する。再生可能エネルギーについては、ペロブスカイト太陽電池をはじめとした国産技術の開発を進めるとともに、メガソーラー等の地域共生の対応策を強化しつつ、国民負担の抑制を図りながら導入を進める。地熱について、掘削調査の支援や次世代型地熱の国内実証開始に向けた取組を進める。変動電源の調整力確保やレジリエンス向上のため、セキュリティが確保された蓄電池の導入等を促進する。SSネットワークの強化や避難所等の燃料備蓄強化、CCSの事業化に向けた支援に取り組む。また、GX戦略地域として、規制改革と一体で、新たな産業クラスターの創出を目指すとともに、AZEC等の枠組みも活用し、我が国技術のグローバル市場形成のための支援を強化していく。また、規制と支援一体でサーキュラーエコノミー市場を創出し、成長志向型の資源自律経済の確立を進める。

 

※以上に加え、日米戦略的投資イニシアティブの推進に必要な日本貿易保険の財務基盤の強化や、関税影響を受ける中小企業の資金繰り支援、国内自動車市場活性化、グローバルサウス諸国におけるビジネス展開支援を含めた新市場開拓支援等、米国関税措置への各種対応も重要であり、当部会としても、米国の関税措置に関する総合対策本部及び日・グローバルサウス連携本部からの提言内容が十分な内容となるよう連携を図る。