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『区画漁業権の運用見直し』の提言について記者会見しました

5月30日の『公共用周波数の民間開放に関する緊急提言』に引き続いて、行政改革推進本部で取りまとめた『区画漁業権の運用見直し』の提言について、記者会見を行いました。

■「水産庁特別班」提言について
以前から、養殖漁業への参入に際し、漁業協同組合から参入事業者に対して、最高で数千万円にもなる高額な漁業権行使料等の金銭徴収がなされていることがわかっていました。

 

ただし、これは漁協と企業間の民間同士の契約によるものですから、双方納得していれば問題ないのですが、我々の指摘により水産庁が調査したところ、複数の地域で不適切な運用が行われていることが明らかになりました。

 

区画漁業権の許可自体は都道府県が行うのですが、現場漁業者の調整を地元漁協が担っており、実質、新たに養殖業に参入する場合、漁協の承認が必要になっています。地元漁業者で十分海面が使い切られていた状況ならよかったのかもしれませんが、最近は地元漁業者が減り、一方で参入を希望する企業が増えてきており、これまでの仕組みが新規参入の障壁となっているという指摘があるのが現実です。

 

さらに、一定条件のもと参入した法人に対し、根拠のない値上げや実際には提供していないサービスに対する支払いを求める交渉があるなど、不透明な状況があるということが今回の調査で明確になりました。

 

なお、今回の問題については、通常行われているJF全国監査機構の監査や県による検査で見逃されていたということですから、監査そして検査のあり方を厳しく見直す必要があります。

 

今回の提言の目的は、養殖漁業への参入ルールを明確化し、不適切な場合は見直すことで新規参入時の透明性を確保し、水産業の成長産業化を図ることにあります。提言は行政改革推進本部「水産庁特別班」において、河野太郎行革本部長のもと、平将明本部長代理、小林(部長補佐)というメンバーでヒアリングを経て取りまとめました。

 

先日、政府の規制改革会議に漁業ワーキングチームが立ち上がることが発表されました。

これまでの提言を受けて、山本幸三規制改革担当大臣が行動に移していただいたものですが、本提言をもとに具体的に改革を進めていただけることを期待し、引き続き進捗をフォローしていきたいと思います。


※以下、提言本文を掲載します。

■行政改革推進本部 行政事業レビューチーム水産庁特別班提言 ~区画漁業権の運用見直し~

平成29年7月27日

【趣 旨】
行政改革推進本部では2016年12月に行政事業レビューチームから予算の無駄削減について提言を行った。その後、水産庁特別班による水産庁や関係企業などからのヒアリング、行政改革推進本部による水産庁の全国実態調査などで、今後の水産政策の推進にとって重要な課題が明らかとなったため次のとおり未来投資戦略(日本再興戦略)2017および規制改革実施計画に関する提言を行い、漁業の成長産業化に資するものとする。

 

【提 言】
○ 区画漁業権の運用見直しについて
クロマグロ養殖業や真珠養殖業などの区画漁業権の運用については、小規模な養殖業者が多数存在しているため漁業者間の調整が重要かつ困難な場合が多いとの理由で、優先順位が第1位にある漁業協同組合にその運用管理が任されており、これまで、現場漁業者の調整においてその役割を果たしてきた。しかしながら、漁業者が年々減少する一方で新規参入を希望する企業が増加するなど環境変化が進む中、漁業協同組合および新規参入希望者の双方から、区画漁業権の運用に対して行政の積極的な関与を求める声が出てきている。さらに、漁業法で定められた区画漁業権の優先順位などの参入ルールが漁業への新規参入の障壁となっているという指摘もある。

 

クロマグロ養殖業では、区画漁業権の優先順位第1位は地元の漁業協同組合、第2位は地元漁民7割以上の法人、第3位は地元漁民7人以上の法人、第4位はその他の漁業者及び漁業従事者(法人含む)、そして第5位がその他の新規参入者等となっている。
そのため、企業などが新規に漁業参入するには、第1位にある漁業協同組合が区画漁業権を有する場合は、企業などが漁業協同組合の組合員となって参入せざるを得ない状況にあり、漁業権を持つ漁業協同組合により企業などから最高で数千万円にもなる高額な漁業権行使料の徴収が毎年なされている。

 

また、企業などが漁業権を取得して漁業権行使料が発生しない場合でも、漁場利用料や地元協力金などの名目で漁業協同組合に相当程度の金額が支払われる事例がみられていることが水産庁の全国実態調査で明らかになっている。
しかも、こうした漁業権行使料や漁場利用料、地元協力金などは、漁業協同組合によって算定根拠が面積、台数、総額などと様々で、その単価も最大で100倍もの開きが見られ、それらの使途についても指導事業費や漁場管理費、繁殖保護費など様々であり、かつ費用の対価として適正に企業などに提供されているのかも不明確である。

 

さらに、漁業参入した企業としては、養殖のエサ購入や販売ルートについて漁業協同組合を通す必要がない場合でも、水揚げ協力金やエサ購入手数料などの名目で支払われ、漁業協同組合の運営費などになっているとの指摘もある。
また、養殖漁場の運用管理については、優先順位が第1位にある漁業協同組合にその運用管理が任されているため、養殖業への参入に際しては、養殖漁場の運用管理上で優位な立場にある漁業協同組合との交渉や調整などで、参入事業者は膨大な時間や労力を費やしている実態が指摘されている。

 

こうした状況は、養殖業を営む漁業経営者の不必要なコスト増につながり、漁業者の所得向上、水産物の輸出増大、漁業参入の促進、漁業の成長産業化などの政策推進の妨げになっていると考えられる。
1.区画漁業権の運用については、全国実態調査に基づき法令違反等が無いよう漁業協同組合等の関係者・機関に指導を徹底するとともに、合理的な根拠や価格に基づいて漁業権行使料や漁場利用料、水揚げ協力金などの徴収や使途が適正になされているかなど経営の透明性を確保するため、JF全国監査機構の監査および都道府県による検査を第三者性と厳格性に留意し充実・強化すべきである。なお、行政改革推進本部による指摘があるまで、団体の監査および都道府県による検査で経営の実態が把握できていなかったことも踏まえ、強い覚悟をもって取り組まれることを期待する。

 

2.養殖業などに係る漁業権の優先順位や参入の資格要件、出資制限などの漁業参入ルールについては、漁業権の優先順位や行使状況などに関する全国実態調査を行い、適切に利用されていない漁場を対象として意欲と能力のある者が漁業に円滑に参入できるよう参入ルールや養殖漁場の運用管理について見直しを検討すべきである。

 

3.漁業の成長産業化などを促進するため、異業種連携の事例を全国プレーアップのモデルとし、漁業や水産業への資本・生産・経営・雇用・技術などの“集積化”を積極的かつ効果的に進めるべきである。なお、水産業復興特区については参入者の活動を阻害する規制がないか再度検証し、積極的に対応すべきである。

以 上