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セクハラ事案が示す政・官とメディアの構造問題:多様性の尊重を

昨日4月18日は、都内のホテルで「宏池会と語る会」を開催し、3000人の方々にご来場いただきました。当日配布したリーフレットには宏池会が見据える未来の姿として「K-WISH」を提示しました。これは次の5つの言葉の頭文字をとったものです。

・Kindな政治 権力に対するチェックアンドバランスを確保する

・Warmな政治 大企業・中央偏重から、中小企業・地方が主役のボトムアップ型経済を実現する

・Inclusiveな社会 自立した個人、個性・多様性を尊重する社会へ。

・Sustainableな土台 真に持続可能な経済・財政・社会保障を実現する

・Humaneな外交 平和憲法・日米同盟・自衛隊の3本柱で平和を創る

 

詳しい内容はまた追って解説したいと思いますが、3番目の「Inclusiveな社会」で、人種・国籍・性別・障害・性的指向(LGBT)にとらわれず、ありのままに生きられる社会づくりの推進を掲げたなかで、まさに今回残念な問題が生じました。財務省の福田事務次官のセクハラ問題を週刊誌が報じ、テレビ朝日の女性記者が被害を受けたと公表したものです。

 

福田次官はきのう辞任する意向を示しましたが、テレビ朝日の記者会見から一夜明けた今朝の段階でも、あらためて疑惑を否定したようです。こうなると、事実関係をきちんと解明する必要がますます生じますが、しかし、財務省側が当初、弁護士を通じて女性記者に被害を申告するように求めた初動の対応について、事実であった場合の被害女性に配慮を欠いたものだったと思います。弁護士は財務省に雇用されているので、財務省の記者クラブ(財政研究会)が抗議したように、調査の中立性への疑問も払拭できませんでした。

 

今回あらためて思うのは、役所側もマスコミ側も男性の論理ばかりで動いていることです。国家公務員の採用試験での女性比率は、平成30年度は33.9%と、10年前より約10ポイントあがりましたが、本省の課長クラスは微増傾向とはいえ、いまだ4%程度にとどまっています。(参照:内閣官房「データでみる女性の活躍状況」)。おそらく、財務省の初期対応を決めた幹部に女性はいなかったのではないでしょうか。

 

一方、女性の立場がまだまだマイノリティーであることは、メディアについても同じことがいえます。民放労連の調査によると在京テレビ局の女性比率は、報道や制作の現場で2割いるものの、局長は7.4%、役員となると1.8%で、7局のうち、TBSとTOKYO MX以外はゼロ。そうした背景には、長時間労働などの働き方が、子育てと両立しづらいという構造的な要因が指摘されています。

 

また、今回の取材現場の問題についていえば、報道機関側にも、取材対象者によるセクハラやパワハラから、現場の記者を守る安全配慮義務があります。夜討ち朝駆け取材は日本の報道機関の独特の慣行だと聞いたことがありますが、この働き方だと、際限のない長時間労働を強いられるだけでなく、取材対象者と記者の性的トラブルを招く恐れがあります。

 

全て見たわけではないですが、テレビ報道では、大手新聞にかつて記者として勤めていた女性が、取材先からのセクハラ被害を社内で訴えても我慢するように要求されたと証言したことも注目されつつあります。下記ビジネスインサイダーが実施したアンケートを見ても、本件は氷山の一角の可能性が高いと思われます。

 

「男性記者は私を差し出した」メディアの女性たちが声を上げられない理由

 

事案への真摯な対応を大前提とした上でのことになりますが、今回を機に政治・行政とメディアの関係や取材活動、メディア企業の中での女性の立場や人事評価など、構造的な問題に着目し、構造的な改革につなげていくことも重要です。

 

特にメディア側の問題をどう解決していくべきか、取材される側の私たちから「干渉」することではありません。やはりまずは当事者の間で改善策を検討していただき、新聞協会や民放連から要請があれば、取材を受ける側としてもできるかぎり協力していくのが望ましいと思います。

 

なお総務省では総務大臣を筆頭に、夜討ち朝駆けでの取材をお断りしており、その代わりに日中にできる限り取材の機会を設けるようにすることで、記者の働き方が変わるよう取り組んでいます。

 

Inclusiveな社会、多様性を尊重する社会へ、それぞれの立場から議論し、一緒に作り上げていきたいと思います。

 

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@kobayashifumiaki

 

■お知らせ

私たち若手議員の取組みを描いた本が出版されました。一昨年の年末、高齢者への3万円の給付に私や小泉議員が異論を唱えたところからスタートし、 高木 新平 (Takagi Shimpei) 君に手伝ってもらった「レールからの解放」・「厚労省分割案」・「人生100年時代の社会保障へ」、そして「こども保険」構想へとつながっていった500日。同世代の民間有識者の同志と2020年以降の未来を見据えて議論したいという想いでサポートをお願いし、最後まで粘り強く伴走してくれたRCF 藤沢 烈 (Retz Fujisawa)さんの著書です。

普段テレビや新聞で報道されない、議員の政策立案過程のリアルな姿が見て取れる貴重な本だと思います。ぜひ読んで見てください。

 

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