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挑戦しやすい国を目指して 〜スタートアップ育成5か年計画の提言〜

国会は本会議と委員会があり、先日、今国会の常任委員会は、国土交通委員会に所属することをご報告しましたが、委員会にはもう一つ、必要に応じて国会ごとに設置される特別委員会があります。こちらでは科学技術・イノベーション推進特別委員会に所属して、理事を務めることになりました。

党でも、新しい資本主義実行本部の下に設置されたスタートアップ政策に関する小委員会の事務局長を務めることになり、国会でも党でも、イノベーションやそれを担うスタートアップに関連する政策に注力しています。デジタル政策と並行して、新しい産業やプレイヤーが活躍しやすい環境整備を一気に進めたいと考えています。

新しい資本主義実行本部は第2次岸田政権発足と同時に設立され、本部長が岸田文雄総裁、部長代行を茂木敏充幹事長、 顧問を甘利明衆議院議員が務められ、 スタートアップ企業の育成に必要な制度や支援策について議論します。先日、その議論を経て、政府が策定する「スタートアップ育成5か年計画」に盛り込むべき施策として提言を取りまとめ、岸田総理とスタートアップ政策を担当する後藤大臣に提言を申し入れました。

まず、なぜスタートアップか、というと、社会課題の解決と経済成長を同時に実現していく新しい資本主義のキープレイヤーであること、そして、リスキリングで新たなスキルを獲得した人材の受け皿となり、円滑な労働移動と所得向上を実現する役割を期待していることにあります。

一昨日出演したアベマプライムでも説明しましたが、これまでも政府でスタートアップを支援は行ってきていました。しかし結果的にスタートアップが諸外国に比べて増えていないのは、単年度で計画されていたことと、支援が所管省庁都合で縦割りになっていることで必要な制度整備が見逃され、お金と人材が循環してこなかったことがが原因だと考えています。

今回の提言とそれを反映した政府案は、5ヵ年計画として中期的に実行できることと、総理の下に実行部隊を置くことで縦割りを越えて情報と予算が循環する仕組みとなり、新産業や新規雇用が生まれるエコシステムにできると考えています。特に、deep-tech(バイオ、AI、量子、グリーン、宇宙・海洋、ドローン等)やweb3分野の成長、「5年後に国内スタートアップへの投資額が10倍を超える規模(=0.8兆円(2021年)から10兆円(2027年)」となる未来図から紐解いて、施策を実行し、検証・アップデートしていくことを求めたものとなっています。

今回の提言とそれを採用した計画案のポイントは以下の3点です。

1)人材:スタートアップへの人の流れの強化 ~起業家の輩出・育成のための基盤の抜本強化。

課題は、大きく2つで、一つ目は、採用する企業側が、ストックオプションを諸外国に比べて活用しづらいことで、ストックオプション環境の整備によるスタートアップの人材獲得力の強化に必要な政策を施していきます。

  •  Comment start  (米国にて一般的に活用されている)ストックオプションプール について、会社法や税制上の措置の見直しを含め、環境を整備する。
  • 未上場段階でのストックオプション権利行使については、権利行使の際の要件を緩和するととも、制度の見直しを図る。
  • 株価算定ルールについて、スタートアップに入社した従業員の株式報酬が明確なルールに基づいて算定されるよう、種類株に応じた株価算定ルールを策定する
  • ストックオプション税制について、 権利行使時の課税繰り延べ上限の見直しや期間(10年間)の延長など利便性の向上を図る
  • 種類株式については、煩雑な手続とが必要で活用しにくいため、該当行為の明確化等の見直しを行う。


二つ目は、スタートアップへの投資にインセンティブが働きづらいことで、日本版QSBSを導入することで一定の解決を図りたいところです。米国にQualified Small Business Stock (QSBS)制度というのがあり、一定の要件を満たすスタートアップの株式譲渡益は一年間・一社につき1,000万ドルまで非課税で、当該譲渡益を原資とした再投資について上限なく課税繰り越しとなるなど、創業者が次なる創業者や投資家となり、スタートアップの創出や支援を行えるので、エコシステムの形成・発展に重要な役割を果たしています。

日本においても、再投資に関する非課税措置等の制度整備は早急に行う必要があります。合わせて、エンジェル税制(=スタートアップへの投資を促進するためにスタートアップへ投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇を行う制度)を、税制優遇を受ける際に必要な申請書類の削減、手続の簡素化・オンライン化促進など、利用者の負担軽減や英語対応を促進することを提言しています。

もう一つ、未上場株式取引のためのプラットフォーム(セカンダリー・マーケット)の創設の提言も大きなポイントです。

働き方の面で、日本は諸外国に比べ、起業家が少なく、終身雇用を前提とした働き方、兼業・副業の禁止、新卒一括採用偏重など、長年の雇用慣行により、人材の流動性が低いという特徴があります。

また、社会慣習として、借金や個人保証を抱えることを失敗時のリスクと考え、起業に踏み切れない起業関心層が多いのが実態です。

この辺りは、起業家人材の育成事業拡充し、初等中等段階からの起業家教育の充実、起業を躊躇させる経営者保証の是正、スタートアップを担う人材や支援する人材の拡充(人材の流動性の向上)などへの施策を打つことを提言しています。

2)スタートアップへの資金の流れの強化 ~多様な主体からの資金供給拡大

アベマプライムでも一緒に出演した成田さんからの指摘に回答しましたが、国内VCが活躍するための阻害要因を取り除くだけでなく、海外VCから日本のスタートアップへの投資も必要です。

これについては、官民ファンド等を機能強化するため、国内外VCへの資金供給を拡大し、海外VCとのネットワーク強化のための海外拠点機能強化とゲートキーパーを活用します。機関投資家からのVC投資を促進するとともに、VCファンドへの公正価値評価の導入促進する他、個人からVCへの投資も促進していきます。そして、グローバル標準のファンド法制へ改正し、LPS法(投資事業有限責任組合契約に関する法律)について、海外投資上限を撤廃するとともに、web3分野の暗号資産などトークンの投資対象への追加などを図る改正することを提言しました。株式投資型クラウドファンディングを拡充できるよう、年間資金調達上限を年収や資産に応じて設定する等、必要な措置を講じていきます。

3) 政府・地方自治体の調達におけるスタートアップ活用

公共調達は、入札資格や手続きの煩雑さによりスタートアップが入札に参加しづらいのが課題ですが、各府省の官公需を加速的に拡大させる仕組みを構築します。手続きの簡素化も大きな課題で、こちらは、10月まで事務局長を務めていたデジタル臨時行政調査会でもアナログ規制の一括改正に向けて、関連省庁と連携して作業が進んでいるので、規制改革と並行して進めていきます。

  • スタートアップからの公共調達を目標値である3,000億円に早急に拡大
  • SBIR制度など、スタートアップの研究開発の支援を1,000億円に大幅拡充
  • 予算の多年度化を可能とする基金の設立
  • 米国制度を参照し、既存のSBIRの抜本見直し。
  • 入札参加資格等の見直し
  • 地方自治体による公共調達の促進


その他、大学を核としたエコシステムの形成、インパクトスタートアップ(社会的起業)のエコシステム整備、スタートアップのグローバル競争力の強化、地方におけるスタートアップ創出支援の強化など、10項目に渡って提言しています。私たちの申し入れの数日後、第13回「新しい資本主義実現会議」で、この提言を反映した「スタートアップ育成5か年計画」と「資産所得倍増プラン」の2点が決定されました。現在国会で審議されている第2次補正予算に、過去最大規模となる1兆円が計上される予定で、2027年度にスタートアップへの投資額10倍超(10兆円)、ユニコーン100社、スタートアップ10万社創出、シリコンバレーなど海外への派遣人数1000人、などといった数値目標を入れたのも、これまでと違うところです。

しかし、大事なことは、その数字を達成することを目安に、イノベーションが生まれやすく、新しい技術や文化が生まれ、楽しく活気ある社会で私たちが自由闊達に働き、暮らしていけることです。

私自身、こだわったのは、税制含め制度の見直しを一体で行うことでした。歴代の政権の中で初めて重要政策のど真ん中にスタートアップ政策が扱われる今だからこそ、これまで省庁の間に跨ることから触れられてこなかった根本的な制度の見直しに取り掛かりたいと思います。


提言全文はこちらにあります。


申し入れをしてひと段落しましたが、制度化と実装にあたり詳細のツメと馬力がまだまだ必要なので、引き続き起業家、投資家、行政をコーディネートしながら、前進していきます。ぜひご注目いただき、ご意見をお寄せください。


<メディア掲載>

2022/11/28 アベマプライム: スタートアップ政策決定

2022/11/22 ケータイWatch: ドコモ出身の小林史明議員ら、“スタートアップ育成計画”に関する提言を岸田総理に申し入れへ 

2022/11/22 CNET Japan: 10年後に投資額を10倍に–スタートアップ育成5カ年計画に向けた10の提言

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