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衆議院総務委員会質疑:デジタル時代の放送のあり方を検討する

今日(5月14日)の衆議院の総務委員会では、デジタル時代の放送のあり方について討議しました。この日は、宍戸常寿・東大教授(憲法学、情報学)、中村伊知哉・慶應義塾大学教授(メディア政策、情報通信)、砂川浩慶・立教大学教授(メディア政策・法制度)が参考人として出席。私も委員のトップバッターとしてNHKのネット常時同時配信解禁をはじめ、参考人の方々に質問しました。

参考人質疑は通常、重要な法案審議等において、各論点で意見が分かれる場合に実施されるもので、参考人の人選は各党からの推薦を元に決定されます。今回の放送法改正が実現されれば、NHKの放送をネット上で同時配信可能になります。その際、NHKの受信料制度のあり方、NHKがネット配信に踏み込むことで民放の経営を圧迫することがないかなど、立場によって意見が分かれる論点があります。

NHK改革については政務官時代にも注力しており、宍戸教授、中村教授とはその当時から議論を重ねてきましたので、今回は法改正の先にさらに検討すべき点について質疑を行いました。

ネット時代の公共放送の意義とは?

誰でも必要な情報にアクセスできるのがインターネットの素晴らしさですが、いわゆる「フィルターバブル」の問題があるように、データのパーソナライズ等で個人の嗜好性を追求するあまり、社会の分断を招く弊害も顕在化しています。価値観が多様化する時代、放送の「広くあまねく情報を届ける」機能は社会を安定させる上で非常に重要です。

そういう中で、NHKが放送と同時にネットでも番組を配信する意義をどう考えるべきか、という私の問いに対し、海外ではデジタルジャーナリズムの強化によりフェイクニュースに対抗しようとしていると指摘され、「より質の高い、より豊富な情報が必要な人に届けるようにする」必要性を述べられ、同時配信もそのきっかけにすべきとの認識を示されました。

宍戸教授:衆議院インターネット中継より

他方、NHKの同時送信が民業圧迫の批判により長年停滞してきた経緯があり、総務省としては衛星放送の帯域返還やグループ会社の統廃合など、NHKの肥大化とならないよう事業の見直しを条件としてきました。受信料問題への関心は高いのですが、安いのか?高いのか?国民の理解を得るのに、NHKのそもそもの適正な事業規模や内容がはっきりしないと難しいのも事実です。

NHKのあり方について、宍戸教授は、商業ベースの民放やネット情報と異なる公的な財源による「公的な財源によって番組を供給する価値は高い」とした上で、地上2波、衛星2波の現行体制を出発点に多いのか、4波でやっと公共放送を維持しているのか、「同時配信をきっかけにNHKの役割、国民の受容性を見ながら、事業規模を考えていくべき」との見解を提示しました。

変革のチャンスにどう向き合う?

そうした中で、外資系の動画サービスが続々と参入するなど日本の放送はグローバル化の波に直面しています。そういう時に現在の制約をどうするのか。仮にNHKがネット事業を本格化させたいと思っても、受信料収入の2.5%までの規模というリミッターがあります。私は、グローバル対応で、NHKと民放が共通のプラットフォームを作って、海外に発信していくなど、手を携えられるところは協力する選択肢はあるべきだと考えています。

その際、国外への配信事業やradikoなどは「2.5%」ルールから除外したらよいと思いますが、同様に中村教授も「2.5%の拡大は考えてしかるべき場面は出てくる」と述べられ、配信基盤、アプリ、権利処理などNHKと民放の共通課題を進める方向性について意見を述べられました。

中村教授:衆議院インターネット中継より

また、中村教授は、通信業界、IT業界との連携などにも触れられ、特にNHKの番組コンテンツの海外展開については、2010年から5年で4.4倍に増えたことを挙げて「さらにより潜在力を発揮できる」と期待感を示しました。

他方、国内の放送市場の活性化も必要で、衛星放送への新規参入に門戸が開かれています。地上波よりもコストを少なく全国に放送できるメリットは以前もブログでご紹介しました。

過去記事:衛星放送の熱い未来:BS新規参入公募開始

加えて、オリンピック・パラリンピックの後には地上波も、放送大学の帯域が空く予定です。

一連の新規参入の動きについて中村教授の考えを尋ねたところ、「サービス、コンテンツを向上させる、多様化させる、非常に重要な施策」と評価されました。周波数の逼迫という課題はあるものの、「衛星の波はその中でも非常に重要な資源。できるだけ有効活用するのは意味が大きい」と期待を示され、地上波についても「これまでの放送にできなかったことを、様々なテクノロジーを使って有効活用できればと望んでいる」と述べられました。

この日の議論全体としてはこれまで私が考えてきた「未来像」と概ね一致しました。進化するデジタル時代、さらに多元化する放送のあり方について引き続き、深掘りしていきたいと思います。



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