海賊版漫画サイト対策

今期から知的財産戦略調査会 コンテンツ小委員会の委員長に就任しました。事務局長をお願いした赤松健さんとともに、コンテンツ産業の成長産業化と、クリエイターはじめコンテンツ産業に関わる方々の収入が増えるよう、省庁横断・官民で協力して政策に取り組んでいきます。
第一回は、伊東 敦 株式会社集英社 社長室顧問/一般社団法人ABJ 事務局長 兼 広報部会長、福井 健策 弁護士(骨董通り法律事務所)、平井 佑希 弁護士(桜坂法律事務所)から海賊版漫画サイトへの対策について話を伺いました。
最近、オンラインリーディング型の海賊版漫画サイトによって問題が深刻化しています。スマートフォンなどで手軽にアクセスでき、多くのユーザーが利用してしまうため、そのアクセス数は非常に多くなっています。
例えば今回議論になった、とある海賊版漫画サイトは、作品掲載数が4000 作品、月間 3億アクセスを集めていました。
特に今回の議論では、海賊版サイトの「インフラ」として機能していた巨大CDN事業者(コンテンツデリバリーネットワーク事業者)に対する法的な責任追及において、世界的に見ても極めて画期的な判決を民間事業者の方々が勝ち取りました。今回の判決を大きな原動力として、対策を強化していきます。
なぜCDNが重要なのか?: 海賊版の心臓部
海賊版サイトは大量の画像データを配信しなければならず、通常のサーバーでは負荷に耐えられません。そこで、コンテンツを世界各国に分散し、配信を高速化・効率化するCDNを利用することで、単独では到底不可能な大量配信を実現しています。この仕組みが、海賊版コンテンツの爆発的な拡散を可能にしてしまっています。
民間事業者の方々は、著作権侵害の警告やアメリカでの情報開示命令を取得するなど、何度もサービスの提供停止をクラウドフレアに求めてきましたが、提供が停止されなかったため、やむなく提訴に至っています。
画期的判決の意義:クラウドフレアに「幇助責任」を認定
裁判所は、クラウドフレアが著作権侵害に対する幇助を行ったとして、その責任を明確に認定しました。この判決は、以下の2つの理由により、海賊版対策において極めて画期的なものです。
1. 「大量配信」を可能にしたこと: CDNサービスによってオリジンサーバーの負荷が軽減されたことで、「普通ではできなかった大量配信」を可能にした。
2. 「匿名による安心感」を与えたこと: サービス提供時に適切な本人確認を怠っていたため、サイト運営者に「身元が割れないという安心感のもと」配信を行わせていた。
クラウドフレアは、権利侵害通知の無視と本人確認の不足という対応によって、違法行為を積極的に助けていたと判断されました。
この判決が持つインパクト
著作権侵害に対する損害賠償請求がCDNに対して認められたのは、基本的には世界初と認識されており、この判決をテコにしてクラウドフレアに対して他の海賊版サイトについても対応を求めることが可能になります。
なお、この判決は、CDNサービス一般のイノベーションを阻害するものではなく、身元確認を怠り、権利侵害通知を無視したクラウドフレア特有の対応に対し責任を認めた「非常にバランスの取れた判決」であると考えています。
今後の展望
今回の画期的な判決は、今後の海賊版対策における大きな原動力となります。
今後、CDN対策に加え、運営者が逃避のためにドメイン名を頻繁に変えるドメインホッピングの問題、そして不正確な情報でドメイン登録を許しているレジストラの管理体制の是正にも、国際的な団体や関係省庁と連携して取り組んでいく予定です。
コンテンツ産業が日本の基幹産業であり、この問題は今後も新しく生まれる技術への対応も含め、官民連携で手を携え、対応を進めていく必要があります。皆様の大切なコンテンツが守られる世界を実現するために積極的に対策を進めていきます。

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