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携帯市場でフェアな競争を:総務省検討会の”サブブランド叩き”という誤解

昨年末に総務省で「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」を立ち上げました。

検討会はその名の通り、携帯電話各社(MNO)の間での競争、MNOとMVNO(格安スマホ事業者)の競争、あるいはMVNO同士の競争がよりフェアに行われるようにするにはどうすればいいか、その環境を整備していくために、私が設置を提案し、ここまで4回、各社へのヒアリングを行っています

検討会のここまでの動きについては、ビジネスメディアやIT関係の専門媒体を中心に報道され、楽天のMNO参入意向表明もあって注目度が高くなっています。しかし、検討会について、一部の人たちが「総務省が特定の方向に誘導しようとしているのでは」「サブブランド(大手キャリア系列のMVNO)を叩こうとしているのでは」という憶測や誤解が広がっており、検討会を提起した者として、あらためて目的を説明したいと思います。

 

“泥試合”に歯止め:検討会設立の背景

 

皆さんもご承知の通り、モバイル市場は、ドコモ、KDDI、ソフトバンクのMNO 3社が9割のシェアを占める状況が続いています。近年、MVNOの参入で市場が活性化するかと一時的に思われましたが、昨年あたりからMNOが通信料金引き下げなどで逆襲に転じ、一部のMVNO事業者が経営破綻するなど苦戦しているのが実情です。

 

MNO間でも、一時禁止をした携帯端末購入時のキャッシュバックも一部で復活しています。数年前、端末購入時の過度なキャッシュバックを禁止しました。それは、事業者同士が国内の既存顧客の取り合いに資金を投入することで、次の成長分野への配分がなされなかったり、既存ユーザーの料金が高止まりするなどの弊害があるため、キャッシュバック競争という泥仕合を避ける狙いがありました。ただ、現在はその規定を逃れて再度行われている現実があります。

 

そういう背景もあり、業界内では互いに様々な不満が噴出しています。

 

このままだと、本来は、携帯を使う一般国民(昨年9月時点で契約数は約1億6000万)が料金体系や通話品質などで使い勝手がよくなるように健全な競争原理が働くべきところでありながら、市場で「泥試合」が繰り広げられることになりかねません。

 

私たち政治や行政は、一部の企業や団体のためでなく、国民にとって何が最適かで判断しています。フェアな競争を実現するためにどこか課題なのか、いま現在、事業者が何を感じているのかを、すべてテーブルに乗せ、次の方向性を定めるために事実を検証していくのが、この検討会の重要な目的の一つになります。

 

1月からヒアリングを実施し、第2回会合(15日)でMVNO(大手)や中古端末事業者、消費者団体から、第3回会合(22日)でMVNO(中小)、MNO、販売代理店から、第4回会合(30日)でMNOから、それぞれ意見を出していただいています。

(検討会のここまでの議論の大筋の流れや、各社から提出された資料については、総務省のサイトでご覧いただけます。→ モバイル市場の公正競争促進に関する検討会)。

 

論点に挙げられた「サブブランド」

 

ここまでMVNOへのヒアリングであげられた主な意見では、

  • MNOグループのMVNOやサブブランドのサービスは、料金・品質面において一般的なMVNOでは提供できない水準であり、同等性が確保されているか検証すべき。
  • 期間拘束契約(例・2年縛り)の自動更新をやめるべき。
  • 中古端末についてMNOが下取りした端末の海外流出を抑制し、国内再流通を促進させるべき
  • 代理店主導による高額キャッシュバックがみられる
  • MVNOからのメールがMNOでは迷惑メール扱いになり届かない

など様々な意見がありました。

 

これらに対し、MNO側は次のように反論をしています。

  • 接続の提供条件(料金・品質)は、現行のルールに基づいて全MVNOに対して同等のものを設定。(ドコモ、KDDI、ソフトバンク)
  • UQモバイルは、他のMVNOよりも多くの接続料金をKDDIに支払っており、そのために他のMVN Oよりも通信速度が速くなっている。(UQコミュニケーションズ)
  • 2年経過後は同額で期間拘束のないプランも導入した。まずはその効果を検証願いたい。(ドコモ)

 

ここまで挙がってきた論点については、2月後半の次回第5回会合で整理いたしますが、モバイル系のニュースでは、「サブブランド優遇」への注目度がやや高いようにみえます。業界内の関心が強いことや、検討会の構成員の有識者の一人からMNOとサブブランドの関係性を批判的に取り上げる意見が出たこともあったためか、検討会が「サブブランド叩き」の場になっているような見え方につながったのかもしれません。

 

しかし、繰り返しますが、この検討会はあくまで、それぞれの事業者から、ここまで積もりに積もった問題点をすべて俎上に載せてもらい、それらの事実関係を確認した上で、フェアな競争環境を作り出していくためのものです。環境が整えばあとは事業者の努力次第ですから、それ以上関与するべきではありません。

 

変化に即応し、政策をアップデートする

 

ある記者から、今回の検討会で政策の見直しをするということは、過去の政策が失敗だったのでは?という質問をいただきました。その点については、私はこう考えています。

 

情報通信政策のように技術革新が早い分野では、ある時期に万全と思っていた制度がすぐに実態に合わなくなることも珍しくありません。だからこそ、環境の変化に適応した政策をどんどんアップデートしていくことが大事なのです。時折、行政のスピードが遅いという指摘をいただきます。それは、行政が余計に完璧を求めすぎるからです。

 

その背景には、行政の失敗を許さないという風潮が起因しているのではないでしょうか。むしろ、プロトタイプ、β版でいいので政策をまずスタートして、随時見直していく方が、柔軟かつスピード感のある行政の姿勢ができていくと思うので、プロトタイプ思考の行政や政策を後押しする風潮をつくっていければと思っています。

 

制度設計は簡単ではありませんが、有識者の力もお借りしながら、よりよいものを作っていきたいと思います。

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@kobayashifumiaki

 

■お知らせ

私たち若手議員の取組みを描いた本が出版されました。一昨年の年末、高齢者への3万円の給付に私や小泉議員が異論を唱えたところからスタートし、 高木 新平 (Takagi Shimpei) 君に手伝ってもらった「レールからの解放」・「厚労省分割案」・「人生100年時代の社会保障へ」、そして「こども保険」構想へとつながっていった500日。同世代の民間有識者の同志と2020年以降の未来を見据えて議論したいという想いでサポートをお願いし、最後まで粘り強く伴走してくれたRCF 藤沢 烈 (Retz Fujisawa)さんの著書です。

普段テレビや新聞で報道されない、議員の政策立案過程のリアルな姿が見て取れる貴重な本だと思います。ぜひ読んで見てください。

 

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