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日本社会のテクノロジー実装の遅れを取り戻す突破口はこれだ!

今月初め、経団連から経済や社会構造の新たな変革を目指す提言が公表されました。提言では超スマート社会と呼ばれていた「Society5.0」を「創造社会」と命名し、”デジタル革新と多様な人々の想像・創造力の融合により社会課題を解決し、価値を創造する社会” と定義しています。

 

さらにその中で、スタートアップの振興に産業構造の軸を移すという産業転換も提言され、日本が目指すべき姿を「デジタル革新を先導し、多様性を内包した成功のプラットフォーム」と位置付けています。

 

私も、先日、そのSociety5.0をテーマにしたシンポジウムでパネルディスカッションに参加しました。時間や場所に関係なく、誰もが参画できる社会をつくるのが、Society5.0が掲げる「夢」です。テクノロジーの社会実装がそれを強く牽引することは疑う余地がありません。

ただSociety5.0の時代が来るといっても、ピンとこない方も多いでしょう。それは日常生活で目に見える「景色」が変わっていないからだと私は考えます。テクノロジー云々の前に、「景色」が変わらないと人の意識は変わらない。そして、人の意識が変わらないと国は変わらないのです。

 

たとえば、今年の夏は例年になく強い台風に立て続けに見舞われました。ところが、電車が止まるのがわかっているのに、皆さん会社に出勤しようとして苦労されています。もし「テレワーク」が当たり前になっていれば、そんな光景もなくなります。よいトレンドとしては、経団連の皆さんにもご協力いただいて、今年、丸の内や大手町エリアで出勤する人の数が約2割減りました。つまり混雑率も下がったわけです。こういうように言葉を躍らすのではなくて、具体的に目に見える形で「景色」を変えていくことを積み重ねていくことが大事です。

 

また、行政の手続きを簡素化・デジタル化すれば、市役所の窓口で同じような書類を何度も書いて、紙とハンコを持って並ぶ、待つという景色もなくなります。行政の職員もその市民の皆さんも、その時間は別のことに使えます。

そのようにSociety5.0は「人」を起点に、働き方だけでなく生き方を変えていく世界観で成り立っているのです。

 

日本国としてデジタル化にどう向き合うか

Society 5.0 のベースとなる国のデジタル化において、官民でデータをどう利活用していくかの方向性は、非常に重要なポイントです。世界では、民間主導の「アメリカ型」、国がプラットフォームになる「中国型」、モンロー主義的に域内に抱え込む「EU型」の3つのデータ経済圏が顕在化しています。そういう中で日本の出方が問われています。今後、行政手続きのネット対応を進める「デジタルファースト法案」を議員立法で出していこうとしていますが、データもフォーマットも標準化する。官民がデータでコラボレーションしやすい国をつくる。できればインドなども巻き込んでいずれは「日本型」を世界に提案できるように持っていきたいと思っています。

 

そのためにも、足元を見た時に、まずやるべきは「標準化」です。データの取り方を始め、行政で調達するシステムや住民に提供するフォーマットが1718の自治体ごとにバラバラなのです。そのまま、データをオープンにしたところで、国民の使い勝手がいいわけはありません。コストの面で見てもシステムを共通化すれば、現在5000億程度かかっているものが毎年1000億くらい削減できます。

 

一方で日本のいいところの一つは、皆保険制度で医療データが豊富なところです。世界的にもなかなかありません。医療介護データをちゃんと使えるようにすれば、病院や介護施設の景色は変わります。団塊世代が後期高齢者になる「2025年問題」も明るい解決方法となるでしょう。

 

これらの実現のためには、相当数の規制緩和や新しい政策が必要で、意思決定のスピードも上げていかねばなりません。そのためには国会改革。議長の選出などは紙に書いてみんなでぞろぞろと投票箱に行ったりして2時間くらいかかります。重要な手続きではあるのですが、タブレット入力にすれば俄然スピードは上がります。形式的なところだけでなく、本質的なところで何が大事なのか、国会の仕組みも変えていかないとなりません。

 

政策実現へ「窓」が開く瞬間がある

政治の世界に入ってまだ6年ですが、どんなに正しいことを言っていても、社会に実装されることとは必ずしも一致しないことを痛感します。しかし、政策の「窓」が開く瞬間があります。以前、待機児童の母親が書いたブログ「保育園落ちた 日本死ね」という話題がありました。物議は醸したものの、世の中の関心が集まり、子育て政策の窓が開いたのが一つの例です。

そういう意味では、扉が開く瞬間にいい球を投げていくことが重要です。いま雇用に関しては、人手不足という問題が、テクノロジー実装の窓を開け始めました。

課題先進国と言われるほど日本は課題山積ですが、それでも現状豊かな国であることを考えると、課題さえ解決していけば伸び代が十分にあるとも捉えられます。テクノロジーを徹底的に社会実装していくことで、私は日本の未来は明るくなると確信しています。

当日パネルのダイジェストは下記から。

 

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■お知らせ

私たち若手議員の取組みを描いた本が出版されました。一昨年の年末、高齢者への3万円の給付に私や小泉議員が異論を唱えたところからスタートし、 高木 新平 (Takagi Shimpei) 君に手伝ってもらった「レールからの解放」・「厚労省分割案」・「人生100年時代の社会保障へ」、そして「こども保険」構想へとつながっていった500日。同世代の民間有識者の同志と2020年以降の未来を見据えて議論したいという想いでサポートをお願いし、最後まで粘り強く伴走してくれたRCF 藤沢 烈 (Retz Fujisawa)さんの著書です。

普段テレビや新聞で報道されない、議員の政策立案過程のリアルな姿が見て取れる貴重な本だと思います。ぜひ読んで見てください。

 

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