公務員制度改革:官僚の意欲と能力を解放し 、国難に立ち向かう
先週、自民党行政改革推進本部で、官公庁の業務や定員管理に関する提言をまとめ、宮腰国家公務員制度担当大臣に申し入れました。各省庁への調査データを基に、主に、全省庁の業務効率化と、特に極端に負担のかかっている厚労省の業務の負担軽減について、民間からの人材も投入した新しい組織を作り、業務の抜本的な見直しを実行するとともに、全省の定員管理の構造的な問題を見直すことを提言しました。
公務員制度改革は、昨今国家的に大きな課題とされる働き方改革や、霞が関で相次いだ不祥事で急に注目されたように見えますが、実は、2008年、福田内閣で成立した国家公務員制度改革基本法の基本理念に掲げられています。当時、政権に就く直前の民主党の意見も反映して作られました。つまり、10年以上前から与野党ともにやるべきことはわかっているのです。
実はこの12年で多くの災害や国際情勢の変化など、優先して議論すべき国家の一大事が常にあったことと、政局により紆余曲折してまい、放置されていました。しかし、国家の一大事が常に起こるからこそ、その現場で働く国家公務員の働き方改革は急務なのです。私自身、総務大臣政務官として官庁で働き、現場の職員の皆さんと議論した経験からも確信しています。
総務省で働き方改革を推進したことからも、その取り組みが賛同されて他省庁にも広がっているとは言え、業務の見直しをするにも、そこにモチベーションが湧かない人事制度があっては根本的な解決ができません。
一つの例として、止めることほど決断と実行が難しい、ということがあります。時代に合わなくなった政策は、廃止して変えていくべきですが、古い政策を閉じる仕事はあまり評価されません。本来、問題意識を強くもっている現場の職員からボトムアップで意見が上がってくるのが望ましいのだと思いますが、長年の官公庁の組織や空気からすると、外から見ているよりも難しいのです。いらない仕事を続けることは、国民の皆さんからお預かりしている税金の無駄遣いにもなりますので、職員の負担軽減以前に本来評価されてよいのですが、そのような人事制度になっていません。
宮腰大臣も「幹部職員のミッションとして、現場業務の実態把握、それを踏まえた職員の負担軽減、業務の縮小・廃止を含めた負担軽減、これをずっと回していくことは極めて重要。省庁横断で頑張りたい」と答弁されました。
もう一つ重要なのは、スリム化ばかりが改革ではないということです。既存の業務見直しに当たって一時的に「人を増やす」必要も出てきます。なぜなら業務の見直しには一定の稼働が必要であり、すでに余裕のない組織では業務見直し自体が負担で実行できない場合があるからです。
それがまさに統計不正の舞台となった厚労省です。一定期間、既存業務を見直す間は人を増やし、そして目標を遂げたらまた人員を再配置する…。公務員数は2000年代に84万人から省庁再編、独立法人化・民営化で29万人まで減らしてきましたが、ただ減らすというのではなく、必要に応じて適正な規模にする柔軟な人事マネジメントが不可欠です。企業でも重点的な改革対象のプロジェクトに人員をあてがい、案件が終われば異動するというのと同様です。
このあたりについては、内閣人事局の長屋統括官は、「合理化努力はしてきたが、より実効が上がるような定員管理のあり方を模索したい」と応じました。
公務員の不祥事を取り上げ非難するだけでなく、構造的な問題解決に取り組むのが政治の役割です。そのような観点で公務員制度改革に改めて着目すると、上記に取り上げた、人事評価制度の見直し、人員配置の見直しに加え、ポイントは以下に整理できます。
- 議院内閣制の下、国家公務員がその役割を適切に果たすこと。
- 多様な能力及び経験を持つ人材を登用及び育成すること。
- 官民の人材交流を推進するとともに、官民の人材の流動性を高めること。
- 国際社会の中で国益を全うし得る高い能力を有する人材を確保及び育成すること。
- 国民全体の奉仕者としての職業倫理を確立するとともに、能力及び実績に基づく適正な評価を行うこと。
- 能力及び実績に応じた処遇を徹底するとともに、仕事と生活の調和を図ることができる環境を整備し、及び男女共同参画社会の形成に資すること。
- 政府全体を通ずる国家公務員の人事管理につき説明責任を負う体制を確立すること。
今後、公務員制度改革については、提言をもとに政府と具体的な改革プランを詰めていくことになります。一日も早く行政が健全な職場となり、私たち政治家にとって大切なパートナーである国家公務員の皆さんが意欲と能力を存分に発揮し、国民の未来のために働ける仕事となるよう、引き続きコミットして尽力していきたいと思います。
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— 小林史明(衆議院議員/広島7区/福山市) (@kb2474) 2019年4月19日