Blog ブログ

新しい資本主義実行本部 経済構造改革委員会 提言

新しい資本主義実行本部 経済構造改革委員会

提言

令和6年5月23日

自由民主党 新しい資本主義実行本部

経済構造改革委員会

  1. はじめに
    1.現状認識

世界各国において、地政学的リスクの高まり、気候変動対策の進展などを受けて、国際経済秩序の変化、経済構造の変革が始まっている。我が国においては、30年間に及ぶ「デフレ経済」を脱却して、コストカット型経済から、賃上げと投資がけん引する成長型経済への移行を迎えようとしている。

新しい資本主義実行本部は、「成長と分配の好循環」の考えのもと、昨年「脱皮しない蛇は死ぬ」という哲学者ニーチェの言葉を用い、古い殻を打ち破るため、数々の施策を打ってきた。賃上げが、消費の活発化、企業収益の向上、生産性の向上をもたらす起点と捉え、賃金が継続的に上がる好循環の実現に向けて官民で取り組んできた。そして、構造的な賃上げに向けて、機運醸成に向けた政労使の意見交換、適切な価格転嫁推進に向けた「労務費転嫁指針」の策定、賃上げ促進税制における「繰越控除制度」の創設や省力化投資補助金などの施策を実施してきた。加えて、金融資産所得の増加の面でも「資産運用立国実現プラン」を策定し、国民の安定的な資産形成を促すとともに、成長資金の供給を通じた企業の持続的な成長がさらに投資や消費につながる好循環の実現を目指してきた。そして、NISAの抜本的拡充・恒久化等の「資産所得倍増プラン」、資産運用業の高度化やアセットオーナーシップの機能強化、金融・資本市場の機能向上などの施策を実施してきた。

この結果、2024年の春闘では賃金が平均5.24%上昇するなど「物価上昇を上回る賃上げ」を実現した。また、戦略分野国内生産促進税制(いわゆる日本版IRA)をスタートし、民間の事業遂行における予見可能性を高めることで関連分野の海外投資の流出を防ぎ、国内投資の活性化と産業育成を推進してきた。日経平均株価も史上初めて4万円を突破するなど、まさに「潮目の変化」ならぬ、「海の色の変化」が起き始めている。

新たな技術が高速でアップデートされ続けるDX・GX時代が到来し、人類は、従来の延長線上にない非連続な技術革新がもたらす歴史上大きなパラダイムシフトに直面している。我が国を取り巻く環境に目を向けると、AIや量子コンピューターをはじめとしたテクノロジーの進化に伴う産業構造の変化が非常に速いスピードで進んでいる。中小企業においては、人手不足への対応や労働生産性の向上などの諸課題は根深く、我が国のデフレ脱却への道はいまだ道半ばであるが、テクノロジーを活用することで中小企業もグローバルに販路を広げることができる好機である。

また、社会課題の解決を通して、眠れる資産を活用して新たな市場を創出する、さらに、既存企業の省力化や自動化、働き手のリスキリングによって労働生産性が向上する、といった大きな潜在能力を我が国は秘めている。

しかしながら、一部では旧来の硬直的な規制や経済構造などの「壁」によって、好循環に「目詰まり」が生じ、本来のポテンシャルを発揮できていない部分も見受けられる。

そこで、「社会課題はブルーオーシャンであり、コストは成長のための投資である」という考えの下、更なる成長・生産性向上のために、循環を阻む「壁」を変革し、「目詰まり」を解消していくことで、経済構造の変革につなげ、持続可能で実感できる好循環を本格的に拡大させていくことが不可欠である。今後は「海の色の変化」を好機と捉え、来年・再来年も賃上げが継続し、パイを奪いあうゼロサムではなく、パイを広げるプラスサムの思考で、国民が持続的な成長を実感できる状況を作り出すべく、経済構造の変革が求められている。

  2.基本的方向性

「新しい資本主義」では、成長と分配の好循環、賃金と物価の好循環を実現することを目指してきた。

すなわち、まず「賃金」が上がる。その結果、「消費」が活発化し、企業収益が伸びる。それを元手に企業が成長のための「投資」を行うことで、「労働生産性」が上がり、賃金が更に持続的に上がるという好循環を実現する。これにより、「コストカット型の経済」から「成長型の新たな経済ステージ」へと移行することを目指してきた。

このため、当初から、新しい資本主義のグランドデザインとして、以下の3点を掲げてきた。

①   「市場も国家も」「官も民も」による新たな官民連携

②   課題解決を通じての新たな市場の創造、すなわち社会的課題解決と経済成長の二兎の実現

③   課題解決を通じての一人ひとりの国民の持続的な幸福の実現

その実現に当たっては、分配の目詰まりの解消、官民連携による成長力の確保、民間も公的役割を担う社会の実現の3点に注力してきた。具体的には、官民連携による賃上げ、設備投資、スタートアップ育成、イノベーションの推進を同時に拡大するための施策を実施するとともに、時代に沿った新たな官民の連携を粘り強く呼び掛けてきた。

現在、世界全体の不確実性が高まっており、相対的に安定している我が国の政策・経済情勢や、コスト面での我が国の立地環境の変化も踏まえ、投資先としての我が国の魅力が高まりつつある。我が国としては、この機会を捉えて、官民挙げて、設備、人材等に積極果敢な投資を行っていくことが重要である。

「成長と分配の好循環」を図り、「賃金と物価の好循環」をより実感の伴う形で本格化させるためには、大局的な視座のもと各産業分野の構造的課題を把握した上で、政策を組み合わせ、経済構造の変革を成し遂げなければならない。

世界でも人口減少・少子高齢化にいち早く直面する我が国においては、人口増に依存せずに、人材・資源・資金・データが円滑に循環することで、スパイラルに付加価値を高め、継続的な所得向上を実現する新たな成長戦略として、以下の3つの循環を作り出してゆくことが求められる。

  • 生産性を高め供給を増やす循環:人口減少を機会と捉え、産業の革新(スタートアップの成長、既存企業のイノベーション・事業承継・M&A)を促し、リスキリングと労働移動を通じて供給サイドを強化することで、継続的な所得向上を実現する
  • 需要を増やす循環:社会課題解決を通して需要を開拓し、対価を伴う付加価値の高い解決策を生み出すことで新たな市場を創出・拡大し、その成果を可視化していく
  • 海外と繋がる循環:海外との双方向の繋がりによって、ソリューションの海外展開、投資や人材の流入を促し、市場拡大を加速させる

新たな市場創出に向け、次世代のエネルギーとして注目されているフュージョンエネルギーや次世代素材産業、量子コンピューターなどの科学技術イノベーション、AIやweb3等のデジタル施策、中小企業などの既存企業のイノベーションや事業承継・M&Aの促進に向けた環境整備を進めるとともに、社会課題解決をビジネス化するインパクトスタートアップや宇宙ビジネス、ヘルスケア等の様々な分野の持続的成長を官民で支援する。

加えて、日本の強みを活かす戦略として、新たな経済成長の機会の獲得と経済安全保障の推進の観点から、循環経済を国家戦略として進めるとともに、コンテンツ産業など日本が誇るべきクリエイターのポテンシャルを最大限発揮できる環境を整備する。

同時に、海外との双方向の繋がりを強化するべく、グローバル・スタートアップ・キャンパス構想の具体化や、次世代素材産業などにおける国際共同研究の促進や大学の人材獲得力強化などに官民が連携して取り組む。

また、「資産運用立国」を推進し、家計金融資産の現預金を成長分野への投資につなげ、企業価値向上の恩恵が家計に還元されることで更なる投資や消費拡大に繋がる成長と分配の好循環を実現する。

これらのためには、関連する様々な産業構造において人材・資源・資金・データなどのアセットの循環を阻害する規制や商慣習などの「目詰まり」を解消し、構造改革につなげていくことが必要不可欠である。そこにおいては、旧来の硬直的な規制や経済構造などの「壁」を変革すべく、従来の各産業や分野の括りに囚われことなく、政策を横断的かつ一体的に実行する必要がある。

本提言の施策の実行により、今後、人口減少が加速する下でも、潜在成長率を引き上げ、成長と分配の好循環を実現していくことは、我が国の長期的な経済・財政・社会保障の持続可能性を確保し、財政の信認を維持する上で重要な基盤となる。経済あっての財政であり、必要な政策対応と財政健全化目標に取り組むことは決して矛盾するものではない。民間の活力を引き出して、経済成長などの成果につながるよう、ワイズ・スペンディングを徹底していく。

これらによって、我が国が抱える社会課題の解決を通して、所得や幸福感(ウェルビーイング)が継続的に向上する状況を作り出すことで、ひとりひとりが「明日は今日よりも良くなる」と実感できる社会を目指すものである。 

  3.本提言の位置づけ

当本部は、昨年5月30日に「新しい資本主義実行本部 提言」を策定し、政府に提言を行った。それを踏まえ、政府においては、同6月16日に「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」を取りまとめて、閣議決定を行った。

本年については、当本部の「経済成長戦略委員会」、「スタートアップ政策に関する小委員会」、「リスキリング・労働移動・構造的な賃上げ小委員会」を統合し、「経済構造改革委員会」として立ち上げ、経済構造の変革を目指す観点から検討を行ってきた。特に、スタートアップ、インパクト投資、循環経済、中小企業の事業譲渡・事業再編・M&A促進、生産性上昇・転嫁促進、「資産運用立国」、コンテンツ産業、次世代素材産業、労働市場、ヘルスケアなどに焦点をあて、幅広く識見を集め、課題の把握、対応策の検討を進めてきた。

本提言は、上記の検討結果を踏まえて整理したものである。政府においては、本提言を、政府が今後取りまとめる「新しい資本主義実行計画」、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」等に一体的に反映し、態勢を整えるとともに実行に移されたい。当本部も、必要なフォローアップを行っていく。 
Ⅱ.提言

目次

1.    国民の豊かさ・幸福感を実感できる所得向上

(1) 基本的方向性

(2) 所得向上に向けた方策

①     所得向上につながるリスキリングと労働移動の促進

②     労働慣行や取引関係の是正

③ 最低賃金の引上げ

④     個人の資産所得向上に向けた「資産運用立国」の推進

(3) 産業の革新に向けた方策

①     中小企業の経営力強化

2.    好循環成長の実現に向けた経済構造の変革・再構築

(1) 基本的方向性

(2) 経済構造の変革・再構築に向けた方策

①     市場創出をけん引するスタートアップの持続的成長

②     官民資金の成長分野への還流強化

③ 2040年を視野に入れたGX国家戦略

④     循環型の経済構造への変革

⑤     デジタルによる社会課題解決のための基盤整備

⑥     フュージョンエネルギー実現に向けた施策の強化

3.    新たな市場創出を目指す成長アジェンダ

(1) 基本的方向性

(2) 市場創出に向けた方策

①     循環型の経済構造に対応した資源循環市場の創出

②     IPと他産業の組み合わせによる新たなコンテンツ産業の創出

③     次世代素材産業の創出

④     宇宙ビジネスの創出

⑤     次世代ヘルスケア産業の創出(ヘルスケア PT)

⑥ バイオものづくり

4.    海外との双方向の繋がりがもたらす市場拡大

(1) 基本的方向性

(2) 海外との繋がりを強化するための方策

 ①グローバル・スタートアップ・キャンパス構想の具体化

 ②コンテンツ産業の海外展開促進

 ③企業の海外進出・海外投資の促進

 ④国際頭脳循環の確立

 ⑤日本の魅力を活かしたインバウンドの促進

  1. 国民の豊かさ・幸福感を実感できる所得向上

(1)基本的方向性

持続的に所得が上がり続け、国民が豊かさ・幸福感を実感できる環境の実現に向けて、賃金向上に結び付く労働移動、労働慣行の是正、資産運用による金融所得向上を促す。また、それを可能にするために、人口減少が加速する下でも、産業の革新(スタートアップの持続的成長・事業承継・M&A)を促すことで、供給サイドを強化する。

(2)所得向上に向けた方策

所得向上につながるリスキリングと労働移動の促進

国民の所得向上に向け、産業と連動したリスキリングを支援し、成長分野への円滑な労働移動を促進することによって、構造的に賃金が上がる環境を整備する。

(内部労働市場)

ジョブ型人事について、個々の企業が自社に合った導入方法を検討できるよう、先進企業の事例をまとめた指針を策定するべきである。その普及により、導入プロセスや内容について、多様な情報提供を実施するべきである。労働者の選択肢を確保するための解雇無効時の金銭救済制度について、検討を進めるべきである。スタートアップ企業等の労働者や新技術・新商品の研究開発等に従事する労働者が、本人の希望に応じて柔軟に働くことができるよう、こうした労働者に対する裁量労働制等の運用緩和等について検討するべきである。

(外部労働市場)

付加価値の高い産業で求められるスキルを労働者が身につけられるよう、リスキリングによる能力向上支援を行うべきである。そして、労働者が身につけたスキルを活かし、当該産業へ移動できる環境を整備するため、「job tag」(職業情報提供サイト)の充実を推進するべきである。「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」を、成長目標から導いた46万人という目標の達成に向けて着実に執行するべきである。その上で、企業成長や労働移動に繋がる教育プログラムを産学協働体制で開発するとともに、産学官連携で地域のリスキリングのプラットフォームを構築するべきである。観光、物流、建設といった多様な現場で働く人材について、広く業界団体の協力を得て、労働市場で広く活用できるスキルの評価制度を作り上げるとともに、労働者がそのスキルを取得するための必要な支援策を検討するべきである。

個人のデジタルスキル情報の蓄積・可視化を通じてデジタル技術についての継続的な学びを実現するとともに、スキル情報を広く労働市場で活用するための仕組みを検討すべきである。

労働慣行や取引関係の是正

クリエイターやアーティスト等を対象に、適切な収益還元や健全な労働環境等を阻害する労働慣行や取引関係の是正に着手する。

コンテンツ産業に係る政府の司令塔機能を明確化した上で体制を強化し、クリエイターの発掘・育成や海外展開支援に取り組むべきである。

実演家等が働きやすい環境を作るためには、取引慣行を是正していくことが不可欠である。現下の技術革新の中で、コンテンツ産業については、個人の創造性に重点が移りつつあることに鑑み、優越的地位の濫用等を防止し、個人を守ることに力点を置いて、取引慣行等について実態調査を行うべきである。音楽・放送番組の分野から実態調査を開始し、結果を踏まえて、実演家と事務所との間の契約等を適正化する観点から、それに反する行為は独占禁止法に抵触するおそれがあることを示す指針の作成を図るべきである。映画・アニメ等のクリエイター個人の創造性が最大限発揮される取引環境を整備するため、上記の実演家と芸能事務所等との取引等の実態調査に続けて、映画やアニメ等の制作現場におけるクリエイターの取引環境に係る実態調査を行うべきである。また、エンターテイメント業界における実演家・クリエイターの権利保護や労働慣行是正に向け、「文化芸術活動に関する法律相談窓口」の体制強化を図るべきである。

グローバルに通用する作品の制作の資金の確保のため、制作会社に収益を還元するモデルを構築するとともに、世界に通用する放送コンテンツの制作・流通を推進し、クリエイターへの適切な対価還元を実現するべきである。

また、デジタルプラットフォーマーの寡占により、スマートフォン上のアプリストアの手数料が高止まりするなど、クリエイターへの適切な対価還元を損ねているという観点から、スマートフォンアプリ等における公正・公平な競争環境の整備を進めるべきである。

スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律について、公正取引委員会が、規制対象事業者のほかアプリ事業者等の関係者と円滑にコミュニケーションを取りながら、セキュリティ確保や青少年保護等を図りつつ迅速かつ効果的に運用するため、情報技術や情報セキュリティ等の高度な専門人材の登用を進めるなど、公正取引委員会の体制を質・量両面で抜本的に強化すべきである。

さらに、クリエイターのための4K設備・VFX等の利用環境整備、4K・VFX制作技術等のノウハウ習得のための人材育成や権利処理効率化を支援すべきである。

実演家・クリエイターの事務所移籍に際して、在籍当時の過去素材の権利を、肖像権等(写真等)をもとに、その利用を拒否することで、移籍を妨げるといった慣行が見受けられないか、調査を行うべきである。

コンテンツ産業において、製作工程のDXや、映像等の魅力向上、翻訳の効率化による海外展開促進、更にはクリエイターへの対価還元など、テクノロジーの活用は非常に有効である。世界で競争力を有するコンテンツ分野における、AIやVFX、web3等の先端技術の利活用を促していくため、コンテンツ事業者のデジタル技術の利活用を積極的に支援するべきである。

最低賃金の引上げ

賃上げの裾野を更に広げていくため、男女間賃金格差の是正や、非正規雇用労働者の方の賃金引上げを進めるべきである。

最低賃金について、労働生産性の引上げ努力等を通じ、2030年代半ばまでに1,500円となることを目指す目標について、より早く達成ができるよう、中小企業・小規模企業の自動化・省力化投資や、事業承継、М&Aの環境整備等について、官民連携して努力すべきである。また、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げる等、地域間格差の是正を図るべきである。
④個人の資産所得向上に向けた「資産運用立国」の推進

継続的な国民の資産所得向上に向け「資産運用立国」を推進する。家計金融資産の現預金を成長分野への投資につなげ、企業価値向上の恩恵が家計に還元されることでさらなる投資や消費に繋がる成長と分配の好循環を実現する。

資産運用業者については、国際金融センター日本に相応しく世界の資産運用業者と質・量ともに伍していけるプレーヤーの育成を目指すべきである。

働き方やライフコースの多様化等を踏まえ、豊かな老後生活に向けた安定的な資産形成の助けとするため、確定拠出年金(DC)について、個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入可能年齢の70歳への引上げや拠出限度額の引上げを含め、特に若年層の年金不安が解消されるよう、拠出・運用・給付の各段階を通じた包括的な見直しについて検討を進めるべきである。

個人型確定拠出年金(iDeCo)について、高齢期における就業率が伸びていることや老後の資産所得確保の必要性が高まっていることから、その活用の促進のため、拠出限度額の引き上げなどの検討を進めるべきである。

確定給付企業年金(DB)について、運用状況や専門人材の活用に係る取組状況を含む情報を他社と比較できるよう、厚生労働省が情報を集約し公表する等の方法により加入者のための見える化を行うとともに、企業年金連合会による共同運用事業の発展等を促し、企業年金の改革について検討を進めるべきである。

品質が確保された事業者へのミドル・バックオフィス業務の外部委託や運用権限の全部委託を可能とする改正金融商品取引法に基づき、資産運用業の内部管理部門のコスト削減に向けた環境整備を進めるとともに、資産運用業者におけるデジタル技術を用いた効率化を促進するべきである。

アセットオーナープリンシプルにおいて、適切な資産運用体制の確保、運用の高度化等の観点から、資産運用会社からの適切なサービス提供を確保するため、アセットオーナーが資産運用会社に支払う報酬を付加価値に応じたものとすることを盛り込むべきである。

日経225とTOPIXが国内でインデックスの90%を占めている状況に鑑み、NISA(つみたて枠)対象商品も含め、家計の安定的な資産形成を支える投資信託において、多様なインデックスを活用した商品提供が進むよう、創意工夫を促すべきである。

投資信託に関するシステムについて、ベンダー間のデータの互換性の確保やコスト面における資産運用会社の参入障壁の是正に向け、具体的な取組みを関係者で検討・連携を行う場を設けることを、後押しするべきである。

(3)産業の革新に向けた方策
①中小企業の経営力強化

我が国を支える中小企業の数は全企業数のうち99.7%(336.5万社[1]) 、全雇用者の70%を占めており、我が国の競争力の源泉である。しかしながら、すでに団塊世代が75歳を超え後継者が不在という問題があることから、親族外の事業承継促進を進めるための第三者とのマッチングや後継者への株式移転など目詰まりとなっている点について見直しをはかっていく。円滑な事業承継・M&Aを促進するためにも売り手・買い手・仲介事業者といった構造的な視点から革新を進めていく。また、中小企業の取引適正化のため、価格転嫁の基本的な法律である下請法の制度改革も含め検討を進めていく。

(事業承継税制の見直し)

令和6年度税制改正において、特例承継計画の提出期限が2年延長された事業承継税制の特例措置については、その最大限の活用を図り、特例措置期間中の事業承継を集中的に進める観点から、役員就任要件[2]等の見直しの検討を行うべきである。

さらには、事業承継税制について、経営者の若返りや地域経済の新陳代謝が一層進むよう、事業承継・引継ぎ支援センターや商工団体、税理士会とも連携しつつ、制度の周知徹底に取り組むことにより、最大限の活用に取り組むべきである。また、商工団体や金融機関と連携し、事業承継・引継ぎ支援センターの周知広報を強化するべきである。

(円滑なM&A・グループ化)

事業承継税制や中堅・中小グループ化税制など、予算・税制措置を最大限に活用することにより、中小企業の事業承継やM&A・グループ化を推し進め、成長・生産性向上を一層促進するべきである。

M&AにおけるDD(売り手側の財務状況等について買い手側が行う調査)について、リスク検出のための重要なプロセスである旨を啓発するとともに、当事者の意向を前提として、案件の特徴に応じて、過剰とならず適切なDDとなるよう周知するべきである。M&A成立後の成長を実現する上で重要な要素となるPMI(Post Merger Integration:M&A成立後の統合作業)の取組の更なる促進を図るため、中小企業へのPMIの重要性についての啓発や、中小企業へのPMIに対する支援を充実させるべきである。

地域金融機関の中小企業への経営支援強化の一環として、M&Aをより積極的に支援するための施策を検討し、高度人材の確保を含め、適切な業務運営体制の整備を促すとともに、M&A支援を積極的に行っている地域金融機関の取組みの情報提供やその横展開を通じて、金融機関の取組みを後押しするべきである。

(円滑な事業承継)

事業承継・引継ぎ補助金は、手数料の開示充実やPMIの実施等を前提に改善を図るとともに、実績報告の手続等の簡素化を通じ、支払までの期間短縮を検討すべきである。

親族外・社外の第三者への事業承継を促進するため、マッチングプラットフォームに対し掲載する情報の質の向上等を促すとともに、事業承継円滑化や経営人材確保の観点からサーチファンドの育成に積極的に取り組むべきである。また、有能な人材(経営者)を広く登用し、事業承継を更に促進する観点から、第三者への事業承継を促進する税制のあり方についても検討を深めるべきである。

(M&Aの仲介手数料について)

M&A仲介事業者は、売り手・買い手双方の間に立つという立場から、一方に有利な助言は行えないという制約がある。

一方で、仲介事業者は売り手・買い手双方からの手数料を受領することから、売り手との間で重大な利益相反が生じている。

そのため、M&Aを加速させていくためには、利益相反構造を軽減する報酬体系の検討や売り手・買い手が納得しやすい手数料水準を実現していく方向で具体的な検討を進めるべきである。

また、中小企業が安心してM&Aに取り組めるよう、M&A当事者が確認することができるM&A支援機関データベースにおいて、手数料体系や報酬基準額等のそれぞれの支援機関に関する情報の開示の充実を図るべきである。

(資金調達)

経営者保証を取らない融資は新規融資について進んでいるものの、既存の債務については経営者保証が残っている場合も多い。M&A・事業承継の支障とならないよう、M&A・事業承継に際しては、経営者保証を見直す枠組みを検討するべきである。

企業が事業再構築を容易に行えるようにするため、全ての金融債権者の同意を必要とせず、多数決決議と裁判所の認可により金融債務の減額を可能にする事業再構築法制を検討し、早期に国会に法案を提出するべきである。

日本政策金融公庫等によるコロナ対策として実施された資本性ローンは、民間金融機関からの融資を受けやすくなることが期待されるほか、財務の改善を通じて、経営改善・事業再生に資するものであることを踏まえ、引き続き活用を促進するべきである。

中小・小規模事業者の資金調達を強化するため、経営者保証に依存しない融資慣行の確立を引き続き進めるべきである。

不動産等の有形資産担保に依存しない資金調達の選択肢として、企業のノウハウや顧客基盤等の知財・無形資産を含む事業全体を担保に資金調達できる法制度について、早期成立を図るとともに、その積極活用に向けて周知・広報に努めるべきである。

(価格転嫁の促進)

継続的な価格転嫁のため、官公需も含めた労務費等の価格転嫁の周知・徹底、小規模企業も含む取引実態の把握の強化、下請Gメンや優越Gメンも活用した下請法の執行強化、手形等の支払いサイト短縮の後押し等の取引適正化を徹底するべきである。

公正取引委員会・中小企業庁において労務費の交渉・転嫁状況について調査を行い、独占禁止法と下請法に基づき厳正に対処するべきである。継続的な価格転嫁の実現に向け、事業所管省庁とも連携した、「面的な執行」による下請法の勧告案件の充実を図るとともに、下請法の改正についても、検討するべきである。

2.好循環成長の実現に向けた経済構造の変革・再構築

(1)基本的的方向性

好循環成長の実現に向けた環境整備として、人材・資源・資金・データなどのアセットの循環を阻害する規制や商慣習などの「目詰まり」の解消、旧来の硬直的な規制などの「壁」の変革を進め、構造的な問題の解決に取り組む。また、AIやweb3などのデジタルを活用することで効率化の観点だけでなく、新たな市場創出や既存企業の付加価値向上などをさらに進めていく。

また、大企業が中小・小規模企業・スタートアップと連携するオープンイノベーションを推進するため、大企業によるこれらの企業への出資やM&Aを奨励する。あわせて、大企業の兼業・副業の解禁による中小・小規模企業・スタートアップへの人材派遣を奨励する。

(2)経済構造の変革・再構築に向けた方策

市場創出をけん引するスタートアップの持続的成長

過去10年間でスタートアップへの投資額は10倍に増えた。スタートアップ育成5か年計画ではこの成長を更に加速し、5年で10倍、10兆円の投資額を実現する。株式報酬、ファンド法制、上場市場改革等の主要論点について、法制度・税制面での壁を取り払うことで、スタートアップの持続的成長が可能となる環境整備を進める。

(人材の流動化)

上場会社が取締役に対する報酬等として株式を交付する場合には払込みを不要とすること(無償交付)ができる一方、従業員に対しては無償交付ができないことを踏まえ、これを可能とすべく、会社法制の見直しを含む適切な措置を検討するべきである。

役員や従業員へのインセンティブ報酬として利用されているRSU[3]を含めた事後交付型株式報酬に係る規制環境の整備のため、有価証券届出書の提出に代えて、より簡易な手続きである臨時報告書による提出が可能となるよう規制の見直しを行うべきである。

スタートアップ等を含む地方企業と大都市圏の副業プロ人材とのマッチングを一層強化するとともに、地域企業経営人材マッチング促進事業を拡充するべきである。また、副業・兼業を円滑に進めるためのモデル事業を実施するべきである。

スタートアップと大企業に加え、スタートアップと中小企業や大学が戦略的に連携して共同研究開発等を進めるオープンイノベーション体制の構築支援・人材育成・研究開発の支援を検討する。

(資金の流動化)

海外投資家の株式譲渡益課税について、当該税制の政策目的や他制度との整合性、諸外国の状況も踏まえつつ、その在り方の検討を行うべきである。

日本企業の中長期的な企業価値の向上に向けた役員報酬の活用を促す観点から、損金算入が認められる役員給与の範囲の見直しの検討を行うべきである。

海外投資家の外国組合員特例税制について、海外LP(有限責任組合員)から国内GP(無限責任組合員)への投資を促す上での税制の在り方等について、政策ニーズや課題を踏まえつつ、検討を行うべきである。

組合事業から出資割合を超えて分配される組合利益(キャリード・インタレスト)について、構成員課税の対象となる範囲に係る更なる明確化の余地がないか、課題の把握等を行うべきである。

経済のデジタル化に伴う課税上の課題への解決策に関して国際的に合意されたグローバル・ミニマム課税の今後の更なる国内法制化に伴う追加的な事務負担等を踏まえて、外国子会社合算税制について必要な見直しを検討するべきである。

株式会社に対して現物出資をするには、原則として裁判所の選任する検査役の調査が必要となる。この規制がスタートアップに対する知的財産権等を用いた出資の支障となっているため、情報開示の強化等による規制の緩和を含む適切な措置を検討するべきである。

スタートアップと投資家のより適正な契約の実現に向けてグローバルスタンダードとの比較も行った上で、今年度中に「我が国における健全なベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項 」(経済産業省、令和4年3月改訂)の改訂を行うべきである。

コーポレートガバナンス・コードにおける「政策保有株式」について、スタートアップ企業に対して積極的な出資を促す観点から、協業によるシナジー効果を見込んで、スタートアップ企業の株式を保有する企業があることも踏まえ、そうした保有が促進されるよう、企業の有価証券報告書における開示例、株式保有に対する考え方等を紹介する取組を積極的に行っていくべきである。

ディープテック・スタートアップに対する金融機関による融資を促進するため、ディープテック・スタートアップ向けの債務保証制度の拡充について検討を行い、プロジェクト・ファイナンスに対する債務保証のニーズを調査するべきである。

(上場後の持続的成長の促進)

東証のグロース市場に関して、小粒上場後に成長が停滞する企業が多い状況を踏まえ、上場企業の成長と新陳代謝を促す観点から、2022年の市場区分見直しの影響や上場廃止後の受け皿確保等にも留意しつつ、上場維持基準等の中長期的な在り方を検討するべきである。

東証のグロース市場の改革に併せ、グロース市場とスタンダード市場とは独立の関係であるという位置づけも踏まえつつ、スタンダード市場の上場維持基準の在り方について検討するべきである。

スタートアップのM&Aを促進し、グローバルレベルのスタートアップを生み出す観点から、会計基準のグローバルスタンダードである、のれん非償却を内容とする国際会計基準(IFRS)の任意適用の拡大に向けた更なる対応を検討するべきである。

決算短信において、経営管理上重要視している指標を記載可能である旨及びその計算方法の記載を求める旨が明示化されたことを踏まえ、東証等とも連携し、「株式報酬除く営業利益」等の経営管理上重要視している指標を用いた業績報告の拡大に向けた更なる対応を行い、実務への浸透を図るべきである。

IPO時の公開価格の設定プロセスの見直しについて、これまで仮条件の範囲外での公開価格設定、上場日程の期間短縮等に取り組み、昨年、日本証券業協会の規則改正等が行われたところ、その後の状況を踏まえ、関係者への周知・徹底等の対応を行うべきである。

スタートアップが資本政策やインパクト投資の専門家等に無料で相談できる制度の活用を促進し、スタートアップが適切な資本政策をとれるよう支援するべきである。また、スタートアップへの資金調達の支援強化に向けて、エンジェル税制における再投資期間の延長、グロース市場等における上場維持基準の引上げを通じた資金供給の呼び込みやM&Aの促進、セカンダリー市場の制度改革およびベンチャーデットの強化について検討を行うべきである。

(セカンダリーマーケットの形成)

非上場株式のセカンダリー取引の活性化に向けて、運営事業者の新規参入促進のため、今国会に法案が提出された金融商品取引法改正による制度整備を図るとともに、セカンダリーマーケットに関する日米比較調査を行うべきである。また、関係者の実務やニーズを踏まえ、円滑な取引が行われる枠組みの整備を含め、セカンダリーエコシステムの形成を図るべきである。

米国ではセカンダリーファンドやグロース・レイターステージ向けファンドがVCの持ち分を買い取り、スタートアップがVCのファンド組成期間(通常10年程度)を超えて成長し続けることが可能であることを踏まえ、産業革新投資機構のオポチュニティファンドの拡大を図るとともに、DBJにおいても同様のファンド組成を促進するべきである。

官民資金の成長分野への還流強化

社会課題解決という官民共通の目標に向けて、インパクト投資手法を確立させ、成長分野に対する官民の資金供給の担い手を拡大させてゆくことで、社会課題の解決が新たな市場として広がる仕組みづくりを進めるべきである。

(インパクト投資)

インパクト投資市場が成長を遂げる中で、官民ファンドは、インパクト投資の推進のため、インパクト投資に関する運用方針の強化を検討するべきである。

社会効果と持続的成長を実現するインパクト投資を推進するため、インパクトコンソーシアム等において、①国際団体等と連携したインパクト指標・データの整備、②非上場・上場を含む多様な投資手法に係る実務知見の発信、③実証実験等も活用したゼブラ企業[4]等による地域でのインパクトの推進、④インパクトスタートアップと自治体等の官民連携の促進等に向けて検討し、具体的な施策に取り組んでいくべきである。

新たな市場創出や社会・事業の変革に向けた企業経営を一層促進すべく、企業経営におけるインパクト評価の活用を促すよう、企業価値の向上・創造につながる企業戦略やインパクトデータのあり方について、議論を進めるべきである。併せて、新たに策定したインパクト投資の「基本的指針」を基礎に、インパクト企業の特性を議論・具体化し、こうした企業を特定し易くすることで、企業経営を促す知見と意欲を有するグローバルを含む投資家を呼び込む環境整備を進めるべきである。インパクト市場拡大のため、公的機関と民間機関が連携し、エクイティ投資の取組みを推進していくべきである。

地域における社会課題解決エコシステムの構築に向けて、実証を通じたゼブラ企業支援の検討や、スタートアップと自治体の連携促進、デジタル田園都市国家構想交付金の活用、地域経済循環の創出、インパクト投資の促進に取り組むべきである。

(成長分野への資金還流)

サステナビリティ投資は、持続可能な社会の実現とともに中長期的な投資収益の向上を図るものである。GPIF・共済組合連合会が、投資に当たり、中長期的な投資収益の向上に繋がるとの観点から、インパクトを含む非財務的要素を考慮することは、ESGの考慮と同様、「他事考慮」に当たらない旨の政府見解を明確化するべきである。

年金等受給者が、一定の許容リスクの中でより多くの運用の果実が享受できるよう、専門的運用体制の高度化、並びに、経済、市場の動向や運用実績を踏まえた基本ポートフォリオ、オルタナティブ投資割合及びこの前提となる運用目標の検討が図られるべき。

今夏目途に策定するアセットオーナープリンシプルに、リスクとリターンの関係性や経済金融情勢の動向を踏まえ、運用目標等の設定、体制整備を行うことを盛り込み、GPIF・共済組合連合会に受入れを促すべきである。加えて、運用担当責任者(CIO)の設置を含めた専門人材の登用・育成等を盛り込んだ取組方針の策定・公表を促すべきである。

新興運用業者に対する資金供給の円滑化を図るためのプログラム(日本版EMP:エマージング・マネージャー・プログラム)について、政府は、金融機関の取組事例の公表やエントリーリストの策定に加え、アセットオーナープリンシプルにおいて、新興運用業者の取扱いを盛り込み、主要な公的アセットオーナーに同プリンシプルの受入れを促すべきである。

(NPOへの支援)

社会的課題を解決するNPOの取組を後押しするため、NPOの行う事業を支援する中間支援組織を通じて、事業初期における自由度の高い資金供与、人材の確保・育成、事業のコーディネーターの養成・配属などの取組を支援すべきである。

2040年を視野に入れたGX国家戦略

GXの新たな政策を実現し、実行している中で、量・価格両面でのエネルギー安定供給確保、DXの進展や電化による電力需要の増加の規模やタイミング、経済安全保障上の要請を踏まえたサプライチェーン再構築のあり方について不確実性が高まっている。また、気候変動対策について多様かつ現実的なアプローチを重視する動きや、量子・核融合など次世代技術への期待の高まりなどの変化も生じている。

こうした中、GXは経済の新たな生態系を形成する重要な政策と捉え、2050年カーボンニュートラルに向けて、できる限り事業の予見性を高め、日本の成長に不可欠な国内投資を後押しするため、産業構造、産業立地、エネルギーを総合的に検討し、2040年を視野に、脱炭素への現実的なルートを官民で共有するGX国家戦略を早期にとりまとめ、エネルギー基本計画・地球温暖化対策計画の見直しにつなげるべきである。

循環型の経済構造への変革

循環経済の実現を国家戦略として位置づけ、カーボンニュートラルやネイチャーポジティブの実現に貢献し、規制やテクノロジーを活用しながら取り組むことにより成長機会の獲得につなげ、地域とくらしを豊かにするとともに、経済安全保障上、重要な資源を確保する観点から国際ルール形成等を通じ世界をリードするべきである。こうした取組を推進するため、本提言を第五次循環型社会形成推進計画等に取り込むとともに、閣僚級の会議の設置を検討するべきである。

(事業者間連携やイノベーション等による徹底的な資源循環を通じた産業競争力の強化)

今国会で成立した「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」による各都道府県の許可を国一括認定に規制緩和する認定制度に基づき、高度な資源循環事業を3年で100件以上認定するなど、製造業等と廃棄物処理・リサイクル等に携わる資源循環業の連携を強化や再資源化の高度化等を支援すべきである。

「循環経済パートナーシップ(J4CE)」、「サーキュラーパートナーズ(CPs)」等を活用し、製造業等と資源循環業の連携や先進的な取組事例の共有等を促進すべきである。

産業界のニーズに対応したプラスチックや金属等の再生材の効率的・安定的な供給体制を確保するため、産官学連携のプラットフォームの活用とともに、廃棄物の再資源化プロセスへのAI・機械化等の導入や高品質な再生材の生産能力向上を支援すべきである。

再生材や再生可能資源等の循環資源の活用促進のため、経済産業省と環境省が中心となって、資源循環推進に向けた製造業等と資源循環業の横断的な規格の整備を推進すべきである。

循環経済のデジタル基盤整備のため、ウラノス・エコシステムの取組の一環として、規格統一等も含め、産官学連携による取組の強化や支援による情報流通プラットフォームの統一的な運営体制の構築を推進すべきである。

使用済太陽光パネルのリユース・リサイクルの促進のため、義務的リサイクル制度の活用を含め引渡し・引取りを確保する新たな枠組みの構築に向け、制度化の検討を進めるべきである。

持続可能な航空燃料(SAF)の2030年10%導入の実現に向け、循環資源由来の原料調達を含め安定供給できるサプライチェーンの構築、イノベーションの推進、国産SAFの国際認証取得等の取組を通じ、循環型のバイオエコノミー市場を一層拡大すべきである。

資源循環の高度化に向けた高度な技能を有する人材確保のため、政府の外国人人材活用の制度において、資源循環分野を特定技能制度の対象とする検討を進めるべきである。

GX実現に向けた事業者間連携の後押しのため、本年4月に改訂された独占禁止法のガイドラインについて、事業者や関係省庁等で対話しながら、普及啓発や相談対応を通じて活用実績を積み上げるとともに、更なる見直しを継続的に進めるべきである。

(循環経済に関する国際ルール形成による国際市場の取り込み及びESG投資の促進)

循環性に関する企業の情報開示の国際基準が現在存在しないことから、G7広島サミットで承認された「循環経済及び資源効率性原則」に基づき、企業の循環性情報開示手法を含む「グローバル循環プロトコル」の2025年末までの開発に貢献し、国際標準化を進めるべきである。

製品等の競争力に関連するバリューチェーンの循環性指標や環境負荷削減推計手法等を2026年度までに開発し、G7やASEAN、グローバルサウス等を巻き込みルール形成を進めるべきである。

製造立国である日本が、同志国と連携しつつ、エコデザイン標準の策定等、部品・部材メーカーを含む日本企業が国際競争力を高められる国際ルール形成をリードすべきである。

グリーン金融関連のガイドライン策定等を通じ、循環経済のESG投資を推進すべきである。

(経済安全保障を確保するための国内外の資源循環体制の確立)

資源制約を克服するため、レアメタル等の重要物資を資源循環により戦略的に確保することが不可欠であり、電子スクラップ(E-scrap)のリサイクルの処理量を2030年までに約50万トン(2020年比5割増)に増加させることを目指し、設備及び拠点整備の投資を支援すべきである。E-scrapの輸出入手続が2025年から煩雑化する対策としてデジタル化等の迅速化対策を2024年度中に決定し、関連の国際ルール作りを主導すべきである。

ASEAN諸国等における廃棄物管理の法令等の制度構築や日本企業と現地企業の協働を支援することにより、当該国において適正に回収されたE-scrap等を我が国で高度に再資源化する事業につき2028年度までに開始できる体制を構築すべきである。

国内の金属スクラップ等が不適正に処理され海外に流出している対策として、まず、実態を正確に把握するために2024年度に関連の貿易品目分類の見直しを開始すべきである。また、環境対策が不十分なヤードへの対応として、関係省庁の連携の下、スクラップの適切な管理や廃棄物の適正処理の徹底、不適正な輸出の防止対策に取り組みつつ、廃棄物処理法に基づく有害使用済機器保管等届出制度等の見直しなど必要に応じた制度的措置を講じるべきである。

金属スクラップ等の流出対策に加え、近隣諸国が課す金属スクラップ等の輸出関税の国際貿易ルール上との不整合の有無等の検証を通じ、国際的に公正な競争環境を促進すべきである。

国内での金属資源を始めとする循環体制を強化するため、国内外の資源循環ネットワーク拠点の戦略的構築や資源循環の拠点港湾の選定・整備等を推進すべきである。

我が国の資源循環産業の海外展開を強化するため、ASEAN、グローバルサウス等の途上国に対し、日本の優れた廃棄物管理やリサイクルに関する制度・技術・人材育成を展開し、具体的なプロジェクト形成を通じ環境上適正な廃棄物管理及びインフラ整備を推進すべきである。

デジタルによる社会課題解決のための基盤整備

デジタルによる社会課題解決、産業発展を加速させるべく、プロセス指向のデータ戦略を構築し、官民による集中的な投資によって、デジタル基盤の社会実装を進める。

(プロセス指向のデータ戦略の推進)

新たな技術や社会変化への対応を内在化したプロセス指向のデータ戦略を構築し、人材育成・セキュリティ等の他のデジタル戦略と連携をとりながら、データ戦略を自律的にアップデートしつつ各種施策を推進すべきである。

このため、デジタル法制局によるシステム・制度・業務の一体的見直しの強化、デジタル政策の企画能力の向上やデジタル基盤の開発・運用を担う外部機関の検討(Gov Tech Japan構想(仮称))など、データ戦略の司令塔となるデジタル庁の体制を強化しつつ、デジタル公共財の整備やDFFTの具体化・国際的なデータ連携基盤の構築に取り組むべきである。

また、イノベーションによる社会課題の解決に向け、AIの研究開発・実装がしやすい「世界一AIフレンドリーな国」を目指し、研究開発力、利活用、インフラの高度化の好循環の実現による競争力強化と、事業者等の自発的なガイドラインと必要最小限の法的枠組みを組み合わせた安全性確保とを一体的に推進すべきである。

(デジタルライフライン全国総合整備計画)

今後10年を見据えたデジタル時代の社会インフラ整備を目的とする「デジタルライフライン全国総合整備計画」に基づき、先行地域における自動運転サービス支援道、ドローン航路、インフラ管理DXのアーリーハーベストプロジェクトを2024年度から開始するとともに、その成果の他地域への展開を図るべきである。その際、デジタルライフラインの共通の仕様や規格等を策定し、事業者等に遵守を求めることで、重複投資を回避しなければならない。加えて、災害からの創造的復興を目指し、石川県における奥能登版デジタルライフラインの整備を新たなアーリーハーベストプロジェクトの一つとして支援し、他地域への展開が可能な汎用モデルを実現するべきである。

(ウラノス・エコシステム)

デジタルによる新たな価値創造を促進し、脱炭素社会・循環経済の実現といった社会課題の解決とイノベーションを両立するため、企業や業種を横断して、データやシステム連携を行うためのプラットフォーム構築等の取組である「ウラノス・エコシステム」を推進するべきである。具体的には、先行ユースケースである蓄電池サプライチェーンでのカーボンフットプリント算出に向けたデータ連携システムの運用を着実に進めるとともに、欧州Catena-Xを始めとする海外プラットフォームとの相互運用性確保等にも取り組むべきである。これらの成果を踏まえた上で、例えば、サーキュラーエコノミーへの移行に向けて、規格統一等も含め、ライフサイクル全体でデータ連携を行う情報流通プラットフォーム及び運用体制の構築を推進すべきである。これらの具体的取組と合わせて、データの安心・安全を確保するための公平で公正なルール整備をグローバルに推進し、DFFTの実現を目指すべきである。

フュージョンエネルギー実現に向けた施策の強化

フュージョンエネルギーの実現は、わが国の自律性の確保、産業振興を通じた国富の増大およびエネルギーを含む安全保障全般の強化に資することから、戦略、法制度、予算、人材面での抜本強化が必要である。政府は、2030年代の発電実証を目指すと共に、産業化までをも見据え、現行戦略を早期に改定すべきである。その上で、①他国に劣らない資金供給量を確保し、トカマク型のみならず様々な型の事業者間競争を促す支援、②大規模試験施設・設備群の拠点化、③原子炉等規制法の対象にはならないとの政府解釈の更なる深化、④NEDO、JST、QST等の資金供給機能の強化、⑤輸出管理や投資規制に関する外為法上の取扱いを含めた、技術管理のあり方、⑥推進体制の強化等を目的とする「基本法」の制定、について早急に検討し、措置を講ずることを求める。次期エネルギー基本計画において、エネルギー政策上の位置づけを高めるとともに、世界に先駆けた発電実証に向けて検討を加速することを求める。

3.新たな市場創出を目指す成長アジェンダ

(1)基本的方向性

国内需要を増やすために、課題先進国である日本が抱える様々な社会課題を成長アジェンダとして捉え、対価を伴う付加価値の高い解決策を生み出すことで、新たな市場を創出・拡大させ、その成果を可視化していく。

(2)市場創出に向けた方策

循環型の経済構造に対応した資源循環市場の創出

(政府調達による国内市場の創出支援)

循環性の高い製品やサービスの需要を拡大するため、2030年度までにグリーン購入法基本方針に位置づけられる全ての特定調達品目に原則として再生プラスチック利用率等の循環性基準を導入することとし、2024年度から取組を開始すべきである。また、エコマーク等の第三者機関による環境ラベルを活用し、一層のグリーン購入の裾野の拡大を図るべきである。

(地域の再生可能資源の徹底活用による地方創生や地域の循環経済市場の創出)

地域の循環資源の特性を踏まえ資源循環のネットワーク形成を主導できる中核的な人材を育成するとともに、地域の特性を活かしたモデル地域を創出し、横展開を推進すべきである。

技術やノウハウの不足、コストの課題を抱える中小・中堅企業の取組を支援するため、地域経済を巻き込んだ支援体制の整備、産官学連携による資源循環ビジネスを推進すべきである。

木材の非住宅建材への活用や改質リグニン等の木質系新素材の利用拡大、適切な森林管理による森林資源の循環利用を促進すべきである。

レアメタルの含有率が高いスマートフォンやPC等の小型家電や電池含有製品について、回収率向上のための目標設定や国民の参加を促す方策により、再資源化に取り組むべきである。

建設廃棄物における水平リサイクルの推進等に向け、2024年度に建設廃棄物由来の再生資材の需給等の実態調査を実施し、その結果も踏まえて、需要拡大策を措置すべきである。

農業残渣などのバイオマスを活用した肥飼料生産や発電・熱利用等の取組を促進すべきである。下水汚泥資源の肥料利用の取組を、安全性にも配慮しつつ全国的に推進すべきである。

一般廃棄物処理施設整備の支援において、適正処理を確保しつつ発生抑制・分別・再資源化等により焼却量削減を推進し、循環型の一般廃棄物処理システムの構築を促進すべきである。

(資源価値を可能な限り活用するまちづくり・インフラ整備の推進)

インフラの長寿命化に向けた持続可能なメンテナンスサイクルの構築に努めるとともに、産業廃棄物等の有効活用等に資するブルーインフラの保全・再生・創出に取り組むべきである。

長期優良住宅の普及や耐震性・省エネルギー性・バリアフリー性等を向上させるリフォームの推進等、持続可能な住宅・不動産ストックの形成を図り、空き家や古民家の活用や古材のリユース等の取組を促進すべきである。

人口減少社会に適応したまちづくりに向け、グリーンインフラの推進や緑地の再生・整備など、低未利用地を再利用する土地利用転換の方策を2024年度中に整理し、推進すべきである。

企業立地に向けた土地利用制約の解消のため、産業用地の確保に向けた土地利用転換の迅速化を図るべきである。

(国民のくらしに密着した循環型ビジネスの拡大)

製品の長期的・効率的利用につながるリユース、リペア、リース、シェアリングエコノミー等を活用できる環境を整備することにより、ライフスタイルの転換を促進すべきである。修繕・部品交換等が容易となる環境配慮設計の促進、環境負荷削減効果等の情報開示やデジタル技術を活用したリユース製品のトレーサビリティの向上、スタートアップを含めた関連サービスのプラットフォームの活用など新たなビジネスモデルの構築の支援に取り組むべきである。

2030年の食品ロス半減目標の達成に向け、関係省庁の連携の下、食品寄附及び食べ残し持ち帰りのガイドラインを2024年度中に策定すべきである。また、飼料・肥料への利用を進め、それが困難な場合にエネルギー利用するカスケード利用を一層推進すべきである。

家庭から廃棄される衣類の量を2030年度までに2020年度比で25%削減することを目指すべきである。ファストファッションのうち特に生産量が多く商品のラインナップの入れ替えが速いものに対する規制を検討するフランス等に動きを注視しつつ、供給量の適正化を進める取組も視野に、売れ残り商品の量・処分方法等に係るアパレル企業の情報開示や、設計、製造、販売から分別、回収の各段階における適正なリペア・リユース・リサイクルのための官民連携のルールづくりを進めるべきである。

国としておむつのリサイクルを促進するため、自治体に対し必要な情報提供、技術実証、設備補助等の支援を行うべきである。併せて、2030年度までにおむつのリサイクルの取組を実施・検討した自治体の総数の目標を100から150に引き上げるべきである。

IPと他産業の組み合わせによる新たなコンテンツ産業の創出

デジタル化への移行を契機に、日本国内に眠る様々なコンテンツの利活用を進め、異なるコンテンツ・産業との組み合わせ等を通じて、新たなIP活用によるコンテンツ産業の創出に着手する。

(音楽)

日本ブランドのキュレーション再構築に向けて、デジタル化時代に対応した過去のコンテンツの利用に係る権利の整理や適切な対価還元を実現するため具体的な方策について検討するべきである。

(アニメ・漫画)

海外プラットフォームが市場支配力を有する中、国内で発生した収益が国内のコンテンツ事業者に十分に還元されていない可能性があるため、ブロックチェーンなどの新たな技術を活用し、日本発プラットフォームを創出しようとするコンテンツ事業者を支援するべきである。

また、JETRO海外事務所を活用して、コンテンツ専門人材を採用・配置し、海外に進出するクリエイター・関連企業の現地におけるビジネス展開を支援、現地でのネットワーク形成を進めるべきである。

(映像)

海外制作会社による大規模映像作品のロケ撮影等の誘致は、地域経済活性化やインバウンド需要喚起のみならず、国内映像産業の高度化に繋がることから、特にVFX等デジタル技術を活用したプロダクションを伴う作品誘致を推進すべきである。

(アート)

博物館同士の連携強化、博物館におけるデジタル・アーカイブ化の促進、博物館の資金調達能力の向上等を含め、我が国全体の博物館の機能強化に向けた方策の検討を図るべきである。

国際的な影響力を持つアートフェアとの連携強化、国内開催に対する支援等により、我が国アートシーンのプレゼンスの向上を図るべきである。

美術館における漫画、アニメ、ゲーム、メディアアート等の展示が可能となるよう原画等の収集、保存及び公開並びにデジタル・アーカイブ化の促進を図るべきである。

博物館等に対するクラウドファンディング等の活用に関する周知普及を図るとともに、博物館の資金調達力の向上に向けた方策の検討を図るべきである。

次世代素材産業の創出

経済安全保障上も重要である次世代素材産業において、研究開発段階から量産段階に至るまで長期に亘り継続的に成長できるよう、産官学連携やオフテイク契約の活用等、資金調達やリスク負担について広く産業界も貢献する仕組みを構築することで、競争力の高い次世代素材産業を創出する。

(研究体制)

マテリアル分野における国際競争力を高めるため、トップ研究者を我が国に引き付ける研究環境整備、研究者・研究支援員の処遇改善、国際的に活躍できる若手研究者等の獲得・育成等に、物質・材料研究機構等の国研や大学が取り組むべきである。

マテリアル分野における最先端装置・設備・施設を戦略的に大学や国研に整備・共用・データ活用するネットワークを強化するべきである。

我が国のアカデミアの強みを活かしながら、次世代情報インフラに資する新素材等の研究開発を推進するとともに、要素技術の研究にとどまらず、統合的な次世代半導体研究開発を行うフラッグシッププロジェクトを新設するべきである。

(資金)

ディープテック・スタートアップの事業化の促進や大きく飛躍するための試行錯誤を後押しするため、法律改正によりNEDOに業務が追加される事業開発活動への補助を含め、支援段階や内容、方法の充実を図るべきである。

最先端装置・設備等の魅力的な研究環境や研究者等の処遇改善を実現し、我が国の大学における国際競争力・人材獲得力を強化するためにも、国による資金に加え、寄附や寄附を運用する基金をはじめとした、大学研究における官民資金の活用を強化するべきである。

米国では、特に株式報酬由来の寄付金について運用型寄附金制度(DAF: Donor-Advised Funds)により、寄附可能な資金を増やしながら慈善活動が行われていることを踏まえ、日本のおいても多様な資産への投資による資金運用が可能な形での運用型寄附金制度(日本版DAF)の導入を検討すべきである。

(産業化・市場化)

事前に需要を可視化し、双方の経営資源を効果的・効率的に活用することを目的に、事業会社によるスタートアップの製品・サービスの調達等について段階的にコミットメントを高めながら事業連携を進める方法について検討し、長期購買確約契約(オフテイク契約)の獲得支援のための必要な措置を講じるべきである。

次世代素材産業の活性化に向け、インテグレーターの創出を目指し、ユーザニーズに基づき様々な新素材をテストすることが可能な環境、新しい人材を育成する環境として、国内外での産学連携やオープンな研究開発拠点の整備を図るべきである。

次世代素材産業におけるスタートアップのExitのためには大企業とスタートアップの距離を近づけて行くことが重要であり、社会実装を見据え、大企業とスタートアップが連携する研究開発や当該成果を活用した設備投資の支援を行うなど、スタートアップの挑戦を後押しする環境整備を進めるべきである。また、M&Aも含めて、スタートアップの成長を促すような市場設計を検討していくべきである。

④宇宙ビジネスの創出

防災・減災や安全保障等に貢献するため、官民連携の下、光学・小型合成開口レーダー(SAR)衛星や光通信衛星によるコンステレーション等の構築に向けて、実証事業等の取り組みや衛星データの利活用を推進する。また、次期静止気象衛星の整備を進めるべきである。

H3ロケットの打上げ成功を受け、基幹ロケットの高度化、民間事業者によるロケット開発支援を含む新たな宇宙輸送システムの官民連携での開発を進めるべきである。

アルテミス計画について、日本人宇宙飛行士の米国人以外で初めての月面着陸に向け、与圧ローバの開発を民間と共同で本格化させつつ、引き続き月や火星以遠への探査に関する研究開発を進めるべきである。

準天頂衛星システムについて、7機体制を着実に整備しつつ、11機体制に向けた検討・開発を進めるべきである。

民間企業や大学等の研究開発を支援する「宇宙戦略基金」について、スタートアップ等の技術開発、新規ビジネス創出、宇宙分野への参入等を促進するため、速やかに1兆円規模となることを目指すとともに、長期の政府調達(アンカーテナンシー)を確保し、民間企業の宇宙事業の展開を後押しするべきである。

民間企業による新たな宇宙輸送等を実現可能とするため、宇宙活動法の改正を視野に、令和6年度内に制度見直しの考え方をとりまとめるべきである。

次世代ヘルスケア産業の創出

日本のヘルスケア産業は、急速な高齢化やイノベーション等により成長が加速。日本が有する多くのポテンシャルを引き出し、グローバルにリードできるヘルスケアマーケット創出を目指す。

そのため、①成長の加速化を体系的・抜本的に進めるとともに、ヘルスケアの特性を踏まえた②国民の安心の観点から、必要な改革を行う。

(成長の加速化)

ⅰ)ヘルスケアスタートアップの育成

○「オープンイノベーションエコシステム」の拠点化―『HX拠点』(仮)

日本全国に散在するイノベーションリソースのネットワーク・拠点化を促進する。大学、企業、VC、医療機関、投資家、インキュベーター(起業段階の支援者)等による「オープンイノベーションエコシステムのハブ拠点化」を形成していく。

○一元的相談窓口の新設、伴走支援の強化

創薬・医療機器開発の総合支援窓口「MEDISO」において承認申請・診療報酬等に関する要望を一元的に受け付ける窓口を新設する。また、ヘルスケアスタートアップの相談窓口「InnoHub」等と連携し、伴走支援・フォローアップ機能を強化する。

医療系スタートアップの支援の機能・体制の大幅拡充や段階的な目標(マイルストーン)の達成に応じた支援などを推進する。実効性強化に向け、事業実績の見える化等により、成功事例の分析を進める。

○起業・インキュベーション機能支援

起業を促進するため、起業戦略、開発、ビジネス戦略等の実践的なトレーニングを積むためのヘルスケアアクセラレーションプログラムを推進する。また、インキュベーターがスタートアップを継続的に育成できるように支援する。

○人材育成・リスキリング

医療機器、バイオ医薬品等ヘルスケア分野で活躍できる多様な人材の育成を体系的に図るため、必要な支援策(薬事・保険等の専門人材、プロジェクトマネジメント人材、他分野からの移転等)の支援をパッケージ化した「ヘルスケア人材リスキリングパッケージ」(仮)を策定する。

ⅱ)ヘルスケアへの投資拡大

実用化に向けた研究開発段階や、量産化段階における支援を強化に向け、国内VCマーケットの育成、海外VCとスタートアップとのネットワークの促進等を行う。

有望な技術の迅速な社会実装に向け、大企業等によるスタートアップのM&A(合併・買収)を支援するため、税制措置(オープンイノベーション促進税制等)の活用等を行う。

ヘルスケアに対するインパクト投資(財務的リターンに加え社会課題解決のインパクトを意図する投資)等がグローバルで拡大していることから、既存施策(Jスタートアップ、インパクトコンソーシアム、ソーシャルインパクトボンド、グローバルヘルスのためのインパクト投資イニシアティブ(Triple I)等)と連携し、インパクト投資促進を強化する。

ⅲ)テクノロジー活用

○生体・生活データを利用した予防・健康づくりの推進

国民の主体的な予防・健康づくり、データヘルスの推進のため、アプリやウェアラブル・デバイスなどで把握する生体・生活データに基づき、食生活、運動、受診のアドバイス等を通じ生活習慣の改善や病気の予防を図る実証プロジェクトを実施する。

その際、民間PHR(Personal Health Record)サービスが提供するライフログデータ(歩数や睡眠等)の標準化を進め、上記の実証プロジェクトなど生体・生活データと連携して医療機関が受診勧奨や受診時の効率的な検査・診療に活用できる環境を整備する。

○予防・健康づくりへの継続的な参加意欲を高めるプログラムの推進

高齢者の介護予防や生活支援などで、継続的に健康づくりに参加する意欲を高めるため、アプリ等も活用し、民間活力や地域資源を活かした魅力的で効果的なプログラムを実施する。自治体の取組みは、継続参加率などの取組の成果に応じて、財政支援のメリハリ付けを行うなどのインセンティブを付与することで、プログラムの魅力向上に向けた創意工夫を促進する。

ⅳ)国際展開(マーケット分析と支援体制の強化)

現地ニーズや利用者のセグメント(所得階層、地域性等)にあわせたサービス開発、マーケット拡大とともに、海外で使われている治療薬を日本で使うことができない状況(ドラッグラグ・ロス)の解消に向けて、ハブ機能(大使館、ジェトロ、PMDA(医薬品医療機器総合機構)、Medical Excellence JAPAN (MEJ)等)による支援体制を強化する。

特に、ヘルスケア専門の国際展開支援組織であるMEJの機能強化を通じ、産官学医の連携による保健・医療分野の課題解決(MExx構想)等を推進し、グローバルサウス等への展開を強化する。

ⅴ)バイオ医薬品等の開発促進

グローバルな研究開発の潮流を踏まえ、

・抗体医薬品や再生医療等製品など微生物や細胞等を用いて製造するバイオ医薬品の生産体制の整備

・革新的な医薬品候補についてヒトに初めて投与する(First in human)治験であるFIH試験を実施できる国際競争力のある体制の整備

・治験薬製造施設の整備

・国際共同治験の推進

など、我が国発のシーズを速やかに実用化する国際水準の研究開発環境の実現に取り組む。

(国民の安心・経営の持続可能性(サステナビリティ)-質の見える化と選択肢の拡大-)

ⅰ)予防・健康づくり領域に係るサービスの質の見える化・向上

国民が安心して予防・健康づくりサービスを選択しやすくなるよう、また品質が向上し健全なマーケット形成に資するよう、「質の見える化」を推進し、学会や民間団体等による、グローバルスタンダードとなっている手法などを踏まえたエビデンスの整理や、サービスの質についての第三者による客観的な認証する枠組みづくりを促進する。

また、こうした枠組みの下、質が確保されたサービスについて保険者等による積極的な活用を推進する。

ⅱ)多様なサービス提供と経営の持続可能性

公的サービスの安定提供を前提の上で、一定の条件下のもと、医療法人の附随業務の明確化、介護施設等の保険外サービスの運用改善等を進め、多様なサービス提供や経営の持続可能性確保につなげ、結果として医療介護従事者の賃上げを図る。

さらに、小規模事業者ほど収益性・賃金水準・人手確保等が厳しい傾向にあり、近年、事業承継・再編のニーズも増えていることから、関係施策(事業承継税制、産業競争力強化法による税制優遇、事業承継補助金等の活用)や地域医療連携推進法人・社会福祉連携推進法人の積極的な周知・活用、福祉医療機構による経営支援、各都道府県の事業承継・引継ぎセンター、地域金融機関との連携等による売り手・買い手の円滑なマッチング支援等を進める。

ⅲ)保険外併用療養費制度の運用改善(迅速なアクセス)

有効性評価が十分でない最先端医療等(再生医療等製品、がん遺伝子パネル検査等)について、国民皆保険の堅持とイノベーションの推進を両立させつつ、希望する患者が保険診療の対象となるまで待つことなく利用できるよう、保険診療と保険外診療の併用を認める保険外併用療養費制度の対象範囲を拡大する。併せて、患者の負担軽減・円滑なアクセスの観点から、民間保険の活用も考慮する。

併せて、バイオシミラー等代替の医薬品が存在し、保険診療で選択可能な医薬品等についても、国民皆保険を堅持しつつ、患者の希望に応じて利用できるよう、検討を行う。

バイオものづくり

バイオものづくりは、遺伝子技術により、微生物が生成する物質の量や性質を変化させ、地球温暖化等の社会課題解決に貢献する成長分野である。

微生物設計プラットフォーム事業者を起点とした大規模な技術開発・実証を進めるとともに、バイオ由来製品の初期需要の創出や消費者の受容性を高める品質表示のための制度の整備等、大規模生産・社会実装に向けた取組を進めるべきである。

また、我が国が強みを有するバイオ分野で、最先端のアカデミアやスタートアップが集積する地域を対象に、民間企業とも連携し、インキュベーション拠点の整備・拡充を加速するとともに、海外展開を目指すスタートアップが米国等に進出し、現地のエコシステムとネットワークを構築することを支援するべきである。

4.海外との双方向の繋がりがもたらす市場拡大

(1)基本的方向性

人口減少下における我が国においては、海外市場との接続を強化し、人材・資源・資金・データといったアセットを海外から呼び込む必要がある。国内の新たな解決策を発展させるための技術力強化を推進するとともに、デジタルも活用しながら日本の技術や眠れる資産を海外へ展開していくという双方向の循環により、市場拡大を加速させるべきである。

(2)海外との繋がりを強化するための方策

グローバル・スタートアップ・キャンパス構想の具体化

日本の大学・研究機関の研究シーズをもとに、日本企業のポテンシャルも生かしながら、日米ASEANをはじめとする世界のアカデミア・研究者等の集積と国内外の資金の動員を有機的に連携させ、日本から世界に通用するスタートアップ・ビジネスを創出していく仕組みを海外のモデルとなる大学との組織的連携により構築していくことは喫緊の課題である。

  同構想は、海外大学との組織的連携を図りながら東京に創設するフラッグシップ拠点を中心に、ディープテック分野における新たな日本のイノベーション・エコシステムを実現するとともに、我が国のアカデミアの変革を促すもの。同構想の制度設計に当たっては、日米ASEAN等のトップクラスのアカデミアの集積と叡智の結集、国内外からの多様な資金の導入、市場との対話を通じた社会実装・VC投資に直結する研究モデル、海外のディープテックVCの誘致や日本のディープテック起業家(PhD-CEO)候補の世界への派遣(フェローシップ)を通じた次世代の起業家・投資家等の育成、経済安全保障(デュアルユースを含む)も念頭に入れた制度的枠組み等の要素を取り入れるべきである。

  同フラッグシップ拠点の運営は、上記の要素を実現し得る柔軟かつ民間の活力も確保したガバナンスに拠るとともに、日本のイノベーション・エコシステム全体の構築によるアカデミアの変革との公のミッションを実現し得るものとして、そうした運営を担う法人の在り方を早急に検討し、本年夏までに具体的方針を示すべきである。

  同拠点の施設整備に当たっては、世界の研究・インキュベーション施設の運営経験を組み込みつつ、世界最高水準のデザイン性・利便性を有し、イノベーションに繋がるような偶然の出会い(セレンディピティ)が生まれ、世界のトップ人材を魅了する建築が可能なフレームワークとし、その下で施設整備のための計画を策定すべきである。

(エコシステム形成)

スタートアップ・エコシステムの形成と地方自治体を中心とするコンソーシアム等の活動強化に向け、デジタル田園都市国家構想交付金の活用及びヘルスケア分野を含めたスタートアップ・エコシステム関連施策の充実・強化を図るべきである。そこで、デジタル田園都市国家構想交付金により、地方公共団体が実施するスタートアップの育成施策を重点的に支援するため、同交付金の地方創生推進タイプにおいて採択審査時にスタートアップに係る事業に加点措置を行うなどの措置を講じるべきである。あわせて、企業版ふるさと納税の枠組みを活用し支援するべきである。

スタートアップ・エコシステムにおける産学官金によるコミュニティの形成とその活動を支援するため、スタートアップ・エコシステム拠点都市の海外連携機能強化プログラムを強化するべきである。

スタートアップ・エコシステム拠点都市についてグローバル化、大企業とスタートアップとの共創等の促進を図るための見直しを行う。

 日本のスタートアップ・エコシステムへの海外からの投資拡大のため、政府全体の施策を統合した英語での政策広報の強化を行うとともに、関係省庁は担当施策の英語での政策広報や、海外展示会への積極的な参加、海外投資家を対象としたプライベート・イベントの開催等により、「スタートアップ育成5か年計画」の海外への発信を強化するべきである。併せて、海外の投資家やスタートアップによる日本への投資・進出に当たっての各種手続きの英語による情報発信を充実させるべきである(外為法に基づく届出・報告等を含む)。

中小機構や産業革新投資機構等の官民ファンドにおける、海外VC等からの投資の呼び込みを進めることで、海外VCと我が国VC・スタートアップとの連携・ネットワークの強化を図るべきである。

JETROが実施する海外メンターによるメンタリングやアクセラレーションプログラム、海外投資家を含むエコシステムプレーヤー等の誘致プログラムの拡充に加え、JETROの関連部署の体制の強化を図るべきである。また、グローバルに展開できる大学発スタートアップの創出支援を引き続き行うとともに創出後におけるグローバル展開支援も含めた成長支援を行うため、スタートアップ・大学・大企業のオープンイノベーション支援(共同研究開発支援等)や大学発スタートアップへの出資を充実・強化するべきである。さらに、グローバル思考のスタートアップの担い手を育成するため、海外派遣も含めアントレプレナーシップ教育を質・量ともに充実するべきである。

(人材・キープレーヤーの流動化)

「スタートアップ育成5か年計画」の海外への発信を強化し、スタートアップ支援に対する政府の姿勢を示すことで、VCやアクセラレーターといった海外のキープレーヤーを確実に呼び込むべきである。

高度外国人材の受入れ環境を一層充実させるため、廃校の活用等を含め、外国人の子弟を受け入れる学校やインターナショナルスクール等での教育環境の整備に取り組むべきである。

(海外進出強化)

起業家等の海外派遣プログラムや企業のフェーズに応じた海外展開施策等を通じて、連続起業家を含む日本の起業家の海外での事業展開や、現地での人材獲得、グローバルイベントでの登壇機会の増加のための支援を推進するべきである。

JBICにて、海外進出を図る日本のスタートアップへの支援が可能となったことに伴い、JETROでの各種施策やエコシステム拠点都市等との連携強化を図るべきである。

コンテンツ産業の海外展開促進

コンテンツ産業において、国内外での人材循環によってクリエイターの育成・輩出強化を図りつつ、市場ルールや国内重視の配信機能などの産業構造を変革することで、コンテンツの面的な海外展開を推進するべきである。

(コンテンツ産業共通の取り組み)

アニメ・漫画・映像・音楽等の業界と教育界をつなぐ、必要なスキル調査・フィードバックや、クリエイター育成のための基礎教育プログラムを提供するほか、クリエイターの育成およびクリエイティブ産業振興に必要な能力を得ることができる大学学部や専門学校のコースを創設し、振興するべきである。また、関連分野での留学生の積極的な受入れを図り、国際的な人材の循環を作るべきである。

コンテンツ産業分野における海外人材の獲得のため、特定技能制度の活用に向けて、どのような業務に従事する人材が必要であるか、当該分野が生産性の向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人手不足であるか、などについての検討を行うべきである。

日本のコンテンツの海賊版が生成AIにより学習されるおそれや、外国での被害も深刻化する中、国外犯処罰の導入検討も含め、国際執行を強化するとともに、日本企業による海外プラットフォーム買収等も活用しつつ、海外への正規版の流通を促進するべきである。

我が国のコンテンツ産業の国際競争力を高めるべく、海外向け放送コンテンツの制作・流通を円滑化するため、NHKと民放の共同による国内のインターネット配信プラットフォームの国内外への配信機能強化を後押しするべきである。

(ミックスカルチャーとセンスアップを海外に向けて推進できる統合的なプロデュース機能の設置)

コンテンツ産業の海外展開を強力に推進するため、グローバル市場を前提としたプロデューサーの育成に取り組むとともに、コンテンツ単体への支援に留まらず、分野を超えて連携したミックスカルチャーの取り組みを活発化させる支援体制を整備すべきである。

(アーティストの育成・海外展開支援)

アーティストが海外で認知を獲得するためには海外公演が重要であるが、事業者にとってリスクが高く、円滑な実施に課題もあることから、JETRO等の海外拠点におけるニーズに応じた関係機関と連携した現地サポートや、海外展開に係る補助金を活用した海外公演の開催支援を推進すべきである。

コンテンツ振興のため、東京国際映画祭における映画人の交流のためのアジア交流ラウンジを含め、国際交流基金による日本語教育支援を進める。

企業の海外進出・海外投資の促進

日本企業の海外進出や海外投資を促進するため、経済外交や国際協力の施策とも連動させつつ、企業と海外市場との間の障壁を解消していくべきである。加えて、デジタルを活用した海外展開の重要性が高まっていることを受けて、既存ビジネスとデジタルとを掛け合わせた事業変革についても推進するべきである。

(SNSやNFT等の活用による海外競争力向上)

外需獲得を目指す中堅・中小企業及び小規模事業者の多様な課題に応じて「新規輸出1万者支援プログラム」で支援するべきである。あわせて、国際競争力を強化し、包括的な海外展開支援が可能なビジネスモデルを育てるべく、SNSやNFT等のデジタル技術を有する企業や地域商社等との連携を促進するべきである。

(経済外交)

経済外交戦略と企業ニーズを連動させ、スタートアップを含む日本企業の海外展開を効果的にサポートするための「経済外交強化のための『共創プラットフォーム』」を構築するべきである。その中で、在外公館に新設する経済広域担当官も活用し、第三国市場を視野に入れた日本企業と現地企業との連携促進、日本の特にスタートアップや中小企業が優位性を持つ技術の海外展開支援、政府による日本企業支援メニューの効果的連携強化等を通じて、日本企業の海外ビジネス投資や日本産食品(水産品や酒類を含む)の輸出促進を全面的にサポートする。

(国際協力関係)

国際協力分野における民間資金の果たす役割の拡大を踏まえ、企業による開発途上国向けの投資活動に伴うリスクを手当てすること等により、国際公共財の形成にインパクト投資を始めとする民間資金が自動的に流入するエコシステムを形作り、日本企業にも新たな投資機会を創出するための「触媒」としてODAを活用すべく、抜本的な制度の見直しを進める。また、地方やスタートアップを含む中小企業が持つ我が国の技術を活用し、相手国の社会課題解決にも資する事業を推進できるよう、企業が途上国での事業において直面する障壁を低減すべく、抜本的な制度の見直しを行うべきである。

国際頭脳循環の確立

日本の優秀な研究者に海外先端研究の経験機会を提供しつつ、海外研究機関からの研究者を呼び込むことを通じて、優れた研究が世界中から日本に集う国際的な頭脳循環を確立するべきである。

中小機構や産業革新投資機構等の官民ファンドにおいて、海外VC等からの投資の呼び込みを進め、海外VCと我が国のスタートアップとの連携・ネットワークの強化を図るべきである。

次世代素材産業について、物質・材料研究機構等の国研や大学において、最先端の施設・設備を備え、海外の大学・研究機関と連携して最先端のマテリアル研究や人材育成を行う国際研究拠点を強化・整備するべきである。

日本の魅力を活かしたインバウンドの促進

観光立国推進基本計画に基づき、持続可能な観光地域づくり、インバウンド回復、国内交流拡大に向けた施策を推進し、2030年訪日外国人旅行者数6,000万人、消費額15兆円を達成すべきである。あわせて、観光客の受入れ増加に伴う混雑・マナー違反等の未然防止・抑制等に取り組むべきである。

新しい資本主義実行本部 経済構造改革委員会 

開催実績

第1回【新しい資本主義の実現に向けた今後の論点】令和5年12月14日(木)

 松江  英夫  デロイトトーマツグループ執行役

 内閣官房   新しい資本主義実現本部事務局より説明

第2回【新しい資本主義の実現に向けた今後の論点】令和6年1月24日(水)

 冨山  和彦  経営共創基盤 IGPI グループ会長

 柳川  範之  東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授

第3回【インパクト投資の拡大方策について】令和6年1月30日(火)

 安部  敏樹  一般社団法人リディラバ代表理事、

                       株式会社 Ridilover 代表取締役

第4回【循環経済を巡る国内外の潮流】令和6年2月9日(金)

 岩瀬  広     株式会社三菱総合研究所常勤顧問(全社連携事業推進)

 古木  二郎  株式会社三菱総合研究所政策・経済センター主席研究員

 岩村  有広  日本経済団体連合会常務理事

 長谷川雅巳   日本経済団体連合会環境エネルギー本部長

第5回【東京証券取引所の上場維持基準について】令和6年2月14日(水)

 大崎  貞和  野村総合研究所未来創発センター主席研究員

 城口  洋平   ENECHANGE株式会社代表取締役 CEO

第6回【循環経済と国際競争力・経済安全保障】令和6年2月14日(水)

 神戸  千隆  株式会社デンソー法務・渉外・広報本部副本部長

野畑  嘉也  株式会社デンソー研究開発センター技術開発推進部長

船越  弘文  日本製鉄株式会社代表取締役副社長

田中  茂明  日本製鉄株式会社顧問

小野  透     一般社団法人日本鉄鋼連盟特別顧問・日本製鉄

伊左治勝義   三菱マテリアル株式会社常務執行役員

                     金属事業カンパニー・プレジデント

第7回【中小企業の生産性上昇・転嫁促進】令和6年2月22日(水)

 小林  健     日本商工会議所会頭

 森    洋     全国中小企業団体中央会会長

第8回【事業譲渡・事業再編・M&A促進】令和6年3月1日(金)

藤原総一郎   森・濱田松本法律事務所弁護士

加藤  智治  まん福ホールディングス株式会社代表取締役社長

第9回【ガバナンス・資産運用立国】令和6年3月12日(火)

  大場  昭義  日本投資顧問業協会会長

宮園   雅敬  年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)理事長

岡崎  浩巳  地方公務員共済組合連合会理事長

植村  哲     地方公務員共済組合連合会理事

第10回【スタートアップ・エコシステムの全国展開に向けた好事例と諸課題】

令和6年3月13日(水)

  杉山  浩司  スケールアップソリューションズ株式会社代表取締役

澤    芳樹  大阪大学大学院医学系研究科教授

第11回【エンターテイメント業界のグローバル化と取引慣行の是正】

令和6年3月14日(木)

  山口  哲一  StudioENTRE株式会社代表取締役

  佐藤  大和  レイ法律事務所弁護士

第12回【海外から見た日本のエコシステムの課題と発展方策】

令和6年3月19日(火)

本田  圭佑  X&KSK General Partner

中西  武士  X&KSK CEO

山本  航平  X&KSK Managing Partner

Tihomir Bajić  X&KSK Managing Partner

第13回【グローバル戦略に向けてコンテンツ産業(アニメ・漫画)を取り巻く
構造的課題】
令和6年4月10日(水)

  勝股  英夫  一般社団法人日本動画協会監事、

                       株式会社アニメタイムズ社代表取締役社長

  佐渡島庸平  株式会社コルク代表取締役社長 CEO

第14回【次世代に向けての素材産業政策の在り方】

令和6年4月11日(木)

  中辻   知    東京大学大学院理学系研究科物理学専攻/理学部物理学科教授

木場   祥介  UMI(ユニバーサルマテリアルズインキュベーター株式会社)

                     代表取締役

第15回【経済社会構造の変化に対応する労働市場の在り方】

令和6年4月17日(水)

  平松  浩樹  富士通株式会社 CHRO 最高人事責任者

今井  のり   株式会社レゾナック・ホールディングス CHRO

宇野木志郎   ソニーグループ株式会社人事部シニアゼネラルマネージャー

第16回【中小企業の事業承継を円滑に進めるための課題】

令和6年4月18日(木)

  玉越  賢治  株式会社 YUI アドバイザーズ代表取締役

木俣  貴光  三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

                     コーポレートアドバイザリー部長

第17回【コンテンツ産業の成長にむけた海外展開と基盤強化】

令和6年4月24日(水)

河田  隆宏  株式会社THE SEVEN COO

坂本  和隆  Netflix合同会社コンテンツ部門バイス・プレジデント

杉原  佳尭  Netflix合同会社ディレクター公共政策担当

第18回【アート産業の構造改革】令和6年4月26日(金)

服部今日子   ペース・ギャラリー副社長

秋元  雄史  東京芸術大学名誉教授

ヘルスケア・トランスフォーメーションPT

第1回【ヘルスケアスタートアップ、再生医療支援に関するヒアリング】

令和6年5月7日(火)

梅澤  高明  A.T.カーニー日本法人会長/CIC Japan 会長

佐竹  晃太  株式会社 CureApp 代表取締役社長

志鷹  義嗣  一般社団法人再生医療イノベーションフォーラム (FIRM)

                     代表理事会長

第2回【ゲノム医療等の支援に関するヒアリング】令和6年5月8日(水)

武藤  学     京都大学医学部教授

小坂  雅人  東京海上日動火災保険株式会社ヘルスケア分野専門部長

印南  一路  慶應義塾大学名誉教授

第3回【ヘルスケア産業に関するヒアリング】令和6年5月17日(金)

  加納  繁照  一般社団法人日本医療法人協会会長

                       社会医療法人協和会理事長

  近藤  尚紀   京都大学大学院医学研究科教授

以上


[1] 中小企業庁HP https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/chu_kigyocnt/2023/231213chukigyocnt.html

2023年12月13日公表資料 2021年6月1日時点中小企業数 参照

[2] 実際の承継時に、後継者が役員に就任して3年以上経過している必要があるという要件 

[3]  RSU:Restricted Stock Unit譲渡制限付き株式

[4] ゼブラ企業とは、社会課題解決と事業性を両立していく企業