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決議全文:自由民主党新しい資本主義実行本部新しい資本主義の加速に向けた決議

新しい資本主義の加速に向けた決議

令和6年11月12日
自由民主党新しい資本主義実行本部

 「新しい資本主義」では、成長と分配の好循環、賃金と物価の好循環の実現による社会課題の解決を目指し、官民連携による賃上げ、設備投資、スタートアップ育成、イノベーションの推進を同時に拡大するための施策を果敢に実施してきた。
 この取組の結果、私たちは、33年ぶりの高水準の春季労使交渉での賃上げ、史上最高水準の設備投資など、コストカット型の経済から、高付加価値創出型の経済への転換を実現する歴史的なチャンスを迎えている。
 しかし、デフレを抜け出すチャンスをつかみ取れるか、後戻りしてしまうかは、今般の総合経済対策を始めとする、今後の対応次第である。物価上昇を上回る賃上げを定着させるためには、価格転嫁の徹底と中小企業の生産性向上をはじめとする「稼ぐ力」を強化するとともに、経済成長を確かなものとするための成長分野への投資に官民挙げて大胆に取り組むことが重要である。このため、今般の総合経済対策においては、足下の物価対策とともに、価格転嫁の徹底と中小企業の生産性向上、三位一体の労働市場改革・スタートアップ育成5か年計画の着実な実行、国内投資の推進、「資産運用立国」の実現をはじめとする新しい資本主義の取組を加速すべく、成長力の強化に資する補正予算を昨年を上回る規模で措置するとともに、法律、税制、規制緩和等のあらゆる政策を総動員いくことが求められる。
これらの観点も含め、新しい資本主義の加速に関して、今般の総合経済対策に盛り込むべき重点事項について、下記の通り決議し、政府に対し強く対応を求める。

  1. 賃上げの流れを持続的なものとしていくため、特に中堅・中小・小規模企業において、構造的に賃上げの原資が確保可能となるよう、労働生産性向上のための環境整備を進めることが必須である。価格転嫁対策、生産性向上・省力化投資、大胆な成長投資に向けて、昨年度補正を超える大胆な追加的支援を講じるなど、政策を総動員すること。

(1)労務費転嫁の指針に基づき、各業界での実態調査とその結果を踏まえた改善策の実施、独占禁止法と下請代金法に基づく厳正な対処、パートナーシップ構築宣言の拡大と実効性向上、下請代金法の早期改正など、価格転嫁の商習慣化を徹底して推進すること。
(2)深刻化する人手不足に対応しつつ、生産性の向上を進めるため、DXを始めとする生産性向上・省力化投資を各業界の実態に即して加速的、かつ、きめ細やかに支援・促進すること。カタログ式の省力化投資補助金の使い勝手の改善に加え、中小企業生産性革命推進事業について更なる拡充を図るとともに、省力化に資する多様なロボットの開発を促進させる環境整備を推進すること
(3)地域の経済を牽引する中堅・中小企業の成長力を強化し、より一層の賃上げを促進するため、中堅・中小企業の飛躍的成長や中堅企業・売上高100億円超の中小企業の創出に向け、大規模な設備や工場等への投資、新事業への挑戦などの成長投資への支援策を既に措置したものに加え大胆に拡充すること

  1. 人手不足の中で、意欲ある若手や、経験を生かして働く意欲のあるシニア層に、労働機会を提供できるようにするため、リ・スキリングによる能力向上(キャリアコンサルタントによるキャリアアップ支援)、企業の実態に応じたジョブ型人事、成長分野への労働移動から成る三位一体の労働市場改革を強力に推進すること。また、非正規雇用労働者の賃上げのために、同一労働・同一賃金制の施行を徹底するとともに、正規化を促進すること
  2. 地方の生活環境を支える上で不可欠な医療・介護・物流・教育などの基幹産業について、人手不足が深刻化している現状を踏まえ、デジタル化や省力化を通じた生産性向上・職場環境改善支援に取り組むこと
  3. スタートアップは、経済活性化とイノベーションの担い手であるため、「スタートアップ育成5か年計画」の取組を着実に進めること。特に、公共調達や民間調達の促進、ディープテック分野での設備投資を含めた量産化までの一気通貫の支援、グローバル化の推進、大学等の強みを活かした地域エコシステムの整備、M&Aの促進、産業分野別支援に重点化の考え方も取り入れ、前向きな兆しを確かなものにすべく、昨年度を超える規模の予算を確保し、強力に推進すること。また、成長と社会課題解決を両立させるインパクト・スタートアップについて総合的な育成策を展開すること。さらに、グローバル・スタートアップ・キャンパス構想を担う運営法人の設立やスタートアップへの再投資を行う際の非課税措置の拡充については、「アジア最大のスタートアップハブの実現」の観点から早急な対応が必要であり、早期に必要な法制及び税制上の措置を講ずること。併せて、 米国のようなプロ投資家向けの私募市場の活用によるスタートアップの資金調達環境の整備を目指すこと
  4. 日本の国際的成長力に資する以下の産業分野おいて、官が呼び水としての資金を供給する等により官民一体となって海外資金を含む国内投資を強力に促進すること。
    (1)飛躍的な成長が期待されるAI・半導体分野について、半導体工場が地方創生の「起爆剤」として地域経済を豊かにしていることに加え、世界各国もAI・半導体産業を基幹産業とすべく、中長期の大胆な支援策をもって誘致合戦を展開していることも踏まえ、国内投資を強力に促進する新たな中長期支援の枠組みを創設すること。その際、省エネ効果も高い、最先端のAI・半導体関連の技術開発や量産投資を他の企業に先んじて行うなど、経済効果が高く、持続的な賃上げが期待されるものに重点支援すること。これに必要となる法制上の措置を検討し、次期通常国会に法案を提出すること。

(2)成長が期待される蓄電池、バイオをはじめとする各分野において、次世代全固体電池や最先端の再生医療等製品の製造施設を国内に整備すること。更に、重要鉱物の安定供給確保のため、ガリウムを始めとするレアメタルや銅の供給源の多角化を支援すること

(3) フュージョンエネルギー、量子コンピュータ・デバイス等の量子技術・産業、医薬品産業・医学系研究、次世代素材といった分野をはじめ、官民連携や寄附制度の拡充により科学技術・イノベーションへの投資の拡充を図るとともに、宇宙・海洋等のフロンティアの開拓を進めること

  1. DXについて、日本が強みを持つロボティクス分野における生成AIの基盤モデルの開発の加速や、AIの開発・利活用のインフラであるAIデータセンターの国内整備の促進及び計算資源の高度化を図るとともに、分散型のデジタル社会の実現に向け、利用者保護等に配慮しつつ、諸外国の動向も踏まえながら、web3に関するトークンの利活用や決済の円滑化等のweb3の推進に向けた環境整備を進めること
  2. GXについて、産業競争力強化も見据えた「GX2040ビジョン」の検討を行いながら、「エネルギー基本計画」及び「地球温暖化対策計画」の本年度中を目途とする改定にスピード感をもって取り組むとともに、市場のライフサイクル全体で資源を効率的・循環的に有効利用する循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行を産学官で連携して進めること
  3. グローバルサウス諸国の成長市場の獲得や経済安全保障に資する環境整備のため、グローバルサウス諸国での日本企業と現地企業等による共創プロジェクトの創出や人材育成・高度外国人材の活用等に取り組むこと。また、ウクライナ復興においても、ウクライナ現地企業や中東欧諸国などの第三国と連携しつつ、日本企業の強みを活かした支援を行うこと
  4. アニメ・音楽・放送番組・映画・ゲーム・漫画といったコンテンツは、我が国の誇るべき財産である。経済産業省による事業者向けの支援と文部科学省によるクリエイター個人の支援を「クリエイター支援基金」に統合し、海外における先進的な実践や知見を取り込みつつ、クリエイター・コンテンツ産業に対する教育、発掘、育成、製作、事業化、デジタル化、海外展開・輸出、収益最大化まで一貫的な支援体制を構築し、その施策を抜本強化するとともに、メディア芸術ナショナルセンター(仮称)の収蔵機能と研究機能の一体的整備等の機能強化に向けた取組や、競争当局の協力も得つつクリエイターが安心して持続的に働けるよう、取引慣行の是正を速やかに進めること
  5. 勤労所得の拡大に加えて、金融資産所得を増やしていくため、資産運用立国の取組を推進すること。家計、金融商品の販売会社、企業、資産運用会社、アセットオーナー等、インベストメント・チェーンを構成する各主体をターゲットとした取組をパッケージとして推進すべく、昨年12月に策定した「資産運用立国実現プラン」の着実な実行を図ること。その際、老後に向けた家計の資産形成の更なる環境整備を進めていくため、個人型確定拠出年金(iDeCo)については、加入可能年齢の上限の引上げのみならず、資産形成の必要性を踏まえた企業型DCを含む大幅な拠出限度額の引上げ、NISAの普及も踏まえた制度の分かりやすさや加入者の手続の簡素化等の利便性向上を追求すること、適切な商品選択に向けた制度改善等を盛り込んだ大胆な改革を決定・実行すること。さらに、確定給付企業年金(DB)や企業型DCの運用状況等に係る情報について他社と比較できる見える化(情報開示)を充実させるため、厚生労働省がこれらの情報を集約し、企業や専門家が分析しやすい形で提供できるよう、利便性に配慮した制度設計を進めること。併せて、金融経済教育推進機構(J-FLEC)と連携し、地域における金融経済教育を充実させること。
  6. 国内の農業生産基盤を維持し、地方の稼ぎの柱とするための農林水産業の高付加価値化・成長産業化、オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光や観光地・観光産業の再生・高付加価値化に取り組むこと

決議の前提となる提言はこちらです。