上下水道インフラの老朽化問題と解決策
埼玉県の道路崩落が大きな被害になっています。被害に遭われている方々にお見舞いを申し上げるとともに、救助にあたっている方々に感謝します。
今回、下水道管の老朽化が原因とされていますが、これは全国的な課題で、上下水道管の老朽化に対して更新が間に合っていません。昨年6月17日の決算行政監視委員会の質疑で問題提起しました。動画の22分から24分くらいまでが上下水道の質疑なので、時間がある時にぜひご覧ください。
上記の資料のとおり、全国の上水道で40年の耐用年数を超えた水道管が全体の20%を超えていて、それに対して更新率が年間0.64%となっています。このままのペースだと更新が全く間に合いません。
下水道についても50年の耐用年数を超えた水道管は全体の6.2%に対し、更新率が年間0.15%と同じく更新が間に合っていない状況です。
委員会の質疑では、国交省からは、長期的な観点に立って水道施設の計画的な更新に努めることや技術的支援を行っていること、より効率的、効果的に管路更新を進めることができるよう、AIを用いた管路の劣化診断や更新計画の策定、デジタル技術の導入促進に取り組んでいると回答がありました。国交省として問題意識を持って取り組んでいく覚悟が示されたことは良かったと思いますし、後押しをしていきたいと思います。
しかし、これまで通りの進め方では根本的な解決にはならないという問題意識を強く持っています。なぜなら、私たちの日本は「8がけ社会」に突入していくからです。
2040年に現役世代(15〜64歳)が2割減る「8がけ社会」は、人口も人手も8割になり、あえて単純化すると、10人で行っていた仕事を8人で行うことが求められます。
多くの企業が改革を行い、効率化や高付加価値化に取り組んでいるように、社会インフラについても抜本的な改革が必要になり、維持管理や検査点検などで技術を活用するだけでなく、構造的な見直しが必要になってくると考えます。
例えば水道事業は自治体の仕事として、1741自治体がそれぞれ責任を持っていますが、徐々に広域化・集約化しようという動きがあるものの、現在、上水道は1300、下水道は1500の事業体それぞれが全国で管の埋設や管理・運営というほぼ同じ業務を行っています。
経済産業省と厚生労働省で共同で水道を管理・運営するシステムが開発されましたが、まだ数十の自治体にしか導入されていません。このシステムを全事業体に導入すると毎年約1千億円のコスト削減になることが試算されており、勿体ない状況です。
これに関しては2024年2月7日の予算委員会で取組の強化を提案して、実際にその方向に動いています。
ただし、できるところからやみくもに集約を進めるのではなく、私は国と地方で一体となって計画立案し、いつまでにどの規模でと示していくことが重要だと考えており、それは電力管区と同様に10事業者程度まで再編を行うことが妥当だと考えています。
事業者の数が集約されることで、上下水道と取引を行う民間の企業も1000以上の事業体にそれぞれ提案に回る必要がなくなり、手間が減るだけでなく、取引ロットのボリュームが大きくなることで効率的に事業を行えるようになります。
また、スタートアップ事業者の中には、気象や土地の情報、過去の漏水情報などをAIで分析することで漏水予測が70〜80%の精度でできる、革新的な技術を持つ企業が出てきています。このような企業も取引の規模が大きくなることで、より早く成長が可能になり、海外への事業展開も見えてきます。
そして、現在の水道事業を続けていくことは「8がけ社会」の限られたリソースでは非常に困難なだけでなく、現在の水道事業のままでは2050~2060年頃には水道料金が現在の2.6倍になるという試算もあります。安全確保、ビジネスチャンス、そして利用者のコストを考えてもこれからの人口減少社会に合わせて社会インフラは大きく形を変える必要があります。
この「8がけ社会」に対応した国と地方のガバナンス改革は上下水道だけでなく、例えば消防や国民健康保険事業、教育委員会など様々な分野でも必要です。国と地方が一体となって、今までの人口が増えることを前提とした国と地方の役割分担を見直し、人口減少社会でも持続的に運営でき、成長できる国のデザインが求められています。
そのために岸田政権でデジタル行財政改革会議を立ち上げたので、今後も議論をフォローし、実現に向けて努力していきたいと思います。