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緊迫する北朝鮮情勢:サイバーセキュリティで日本を守る

こんにちは、小林史明です。

今回の総選挙では、安全保障も重要な論点の一つです。安倍総理は9月25日の記者会見で、北朝鮮問題への対応について「いついかなるときであろうとも危機管理に全力を尽くし、国民の生命と財産を守り抜く」と決意を述べました。

(記者会見の全文は首相官邸ホームページでご覧いたただけます)

 

※NICTのサイバーセキュリティに関する研究開発を視察した際の模様。

 

「ランサムウェア」で顕在化した脅威

 

さて、有事への備えと聞いて皆さんが思い当たるのは、弾道ミサイルへの対応でしょう。ミサイル落下時の具体的な対応については、内閣官房国民保護ポータルサイトや、マスコミ報道などで周知され、各地で避難訓練も実施されてきました。北朝鮮はゲリラ戦術を得意としており、テロへの対策もしっかりと進めねばなりません。

 

ただ、ミサイルやテロなどが、目に見える脅威とするならば、サイバー空間からの攻撃は、目に見えづらいところです。しかし、世界を見渡すと、サイバーセキュリティの問題は、現実の危機として顕在化しています。

 

皆さんの記憶に新しいと思いますが、今年5月、日本を含む世界各地で「ランサムウェア」によるサイバー攻撃を受けました。ランサムウェアにシステムを乗っ取られると、電子業務が一切できなくなり、乗っ取り解除のための身代金(ランサム)支払いを要求されます。5月の攻撃時には、特にイギリスの医療機関でシステムが完全にダウンし、現場では手書きのメモなどでの対処を余儀なくされました。サイバー空間では目に見えなくても、身体、生命、財産、社会活動に対し、「目に見える脅威」となるのです。そして、この事案のときも、韓国当局などの分析では、北朝鮮の関与が指摘されています。

 

※引用:総務省サイバーセキュリティの現状と総務省の対応について

 

そもそも北朝鮮の問題を問わず、サイバーセキュリティはしっかり取り組まねばなりません。なぜなら、2020年東京オリンピック・パラリンピックへの対応の問題もあるからです。日本の政府機関のサイバー攻撃の脅威件数のうち、センサー監視等による脅威件数は2014年度の約399万件から、15年度は約613万件、16年度は約711万件と著しく増加しています。すでにサイバー空間では「目に見える脅威」となっているのです。

 

こうした情勢を受け、政府では、2015年にサイバーセキュリティ基本法を施行し、翌16年には内閣にサイバーセキュリティ本部を設置しました。さらにこの年の9月に年金情報の流出事件があったことも踏まえ、新たなサイバーセキュリティ戦略の閣議決定も行っています。そして現場レベルで、セキュリティ人材の育成推進、各省庁対抗による攻撃対処訓練を行うなど具体的な取り組みをすでに始めています。

 

求められるIoT時代への対応

 

ただ、当然のことながら、政府・行政だけでなく民間のセキュリティの備えもしていかなければなりません。特に「IoT」(Internet of Things)化が進んで、あらゆるものがインターネットでつながっていくようになると、セキュリティのどこかにスキがあった場合、被害が広範囲に及びかねないからです。

 

※引用:総務省サイバーセキュリティの現状と総務省の対応について

 

「IoT」に関していえば、総務省では取り組みを進め、この10月3日に、サイバーセキュリティタスクフォースが取りまとめた「IoTセキュリティ総合対策」を公表しました。

 

かなり専門的な内容ですが、大枠だけご紹介すると、

  • セキュリティの弱点を調査・底上げしていく「体制の整備」
  • AIを活用してのサイバー攻撃検知などの新しい対策を進める「研究開発の推進」
  • 「民間企業等におけるセキュリティ対策の促進」
  • 高度な技術を持ち合わせた若手セキュリティ人材など「人材育成の強化」

などに取り組むものです。

 

官民一体、国際協調で対策を

 

サイバー空間には国境はありませんので、世界各国と連携する必要もありあす。すでにG7の情報通信大臣会合や、ドイツ、イギリス、アメリカなどとそれぞれ二国間サイバー対話を行い、国際的なワークショップも展開しています。

 

もちろん、国内でも同様にセキュリティ対策に「壁」があってはなりません。関係省庁間、官と民が一体的に取り組むことが肝要です。

テクノロジーの社会実装により、日本をもっと自由でもっと優しい国に進化させるためにも、社会的インフラであるインターネットへの信頼感は必須です。

北朝鮮問題、東京オリンピック・パラリンピックへの備えをきっかけに、社会的インフラとしてのインターネットと私たちの生活の「守り」を万全にするべく、引き続き取り組みたいと思います。

 

※NICTにおける意見交換の模様。

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